私的・北海道地質百選
『清水沢ダムの幾春別層』

 古第三紀始新世の “夕張挟炭層(≒ 石狩層群)” は夕張炭田を象徴する地層であるが,その良好な露頭を観察できる場所は,実はそう多くない.
 夕張市清水沢ダムは,石狩層群最上部の岩相を観察できるサイトである.


清水沢ダム.堤体上の道路から.2006 年 6 月撮影.
ダム上から見た清水沢の炭鉱風景.2006 年 3 月撮影.

 清水沢ダム(右写真)は, 夕張市ホームページ によると,1938 年に建設され,1954 年に農業用水用として嵩上げされている.

 この場所からの炭鉱風景は非常に素晴らしく,川のカーブの向こうに清水沢火力発電所(後述),さらにその左奥にボタ山が見えている(右下写真).

 この写真を見ると分かるように,清水沢ダムのすぐ下流側には,夕張市ホームページで『ダム直下にある三角錐の岩塊』と表現されている露頭がある.

 遠目で見ても,この露頭は成層した地層であることが分かる.その層理面は 30 度程度,向かって右(南西)側に傾斜している.

 『紅葉山』図幅(高橋ほか,2002)では,この部分は河床堆積物と塗色されており,この地層の所属は明記されていない.
 彼らの地質図によると,この部分の東側に NNW-SSE 方向の背斜軸があり(清水沢背斜),ダム付近で後期始新世の幌内層泥岩の下位に,石狩層群若鍋層・幾春別層が窓状に分布している.露頭の岩相(後述)から考えて,この地層は幾春別層と考えるのが妥当であろう.


※ なおこの露頭は,川の水位が低いときには,なんとか渡って取り付くことができそうである.上の3月の写真ではそう見える.しかしなにしろダム直下であり,それはやらない方が身のためと思われる.

※ 次に断っておきたいのは...このような露頭状況なので,地層を実際に間近で観察したわけではない.あくまでも撮影した写真を拡大して見てのことなので,ご容赦願いたい.


幾春別層露頭.2023 年 7 月撮影.

 “三角錐” 露頭に露出している地層は,厚層(20 - 60 cm)の中粒砂岩と灰色泥岩のほぼ等量の互層で,層理はほぼ平行,砂岩には拡大像で見ても葉理構造は認められず塊状である.
 砂岩層には,一部 nodulous となっている部分(右写真下),泥岩のレンズ~パッチ状のものを含む部分などがあるが,あくまでも遠目であり,明確ではない.
 礫質部や石炭層,また斜交層理部などはいっさい認められない.

 このような岩相から,この地層は河川成の幾春別層と考えられるが,同じ河川成層である夕張層のような粗粒部・炭質部や斜交層理部が見られないことから,浅海成の若鍋層である可能性も完全には否定できない.
 幾春別層は,大夕張図幅(長尾ほか,1954)では “羊歯砂岩層” と呼ばられているように植物化石を含むのが特徴であるが,ここではその有無は分からない.

 いずれにせよ,幌内層に不整合で覆われる夕張挟炭層の最上部の地層が,背斜の軸部に露出していることは確かである.


清水沢発電所.後ろにボタ山が見える.2006 年 9 月撮影.

※ 清水沢発電所(左写真)は, 夕張市ホームページ によると,1926 年に建設され,1994 年に廃止された.その後,残念なことに変電施設や煙突など施設の多くは解体された.
しかしその一部は現在も保存され, 清水沢プロジェクト により見学ツァーが開催されている.


清水沢清湖町にあった風間氏のアトリエ跡.2006 年 10 月撮影.

※ 清水沢発電所(の廃墟)については,清水沢ダムのすぐ上流側にアトリエを構えていた(右写真)写真家・故風間健介による『写真集:夕張』(2005年 寿郎社)が非常に印象的である.


既存の指定など

(なし)


所在地

夕張市 清水沢ダム.


サイトの状態:


参考文献

高橋功二・谷口久能・渡辺 順・石丸聡(2002),北海道立地質研究所,116 p.

長尾捨一・小山内煕・酒匂純俊(1954)5万分の1地質図幅『大夕張』および同説明書.北海道開発庁,119p.


関連サイト

(なし)



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