私的・北海道地質百選
『望岳台』

注)このサイトは,本家・北海道地質百選で石井正之さんが『十勝岳火山群』として投稿したものと一部共通しています.ここに掲載するものは, 石井さんの投稿 とは独立したもので,すべてオリジナルのものです.


 美瑛町望岳台は,十勝岳周辺の代表的な観光スポットの一つで,十勝岳の西麓にあり,千島火山弧の西端部であり北海道最大の火山地帯・大雪-十勝火山連峰の景観を楽しめるサイトである.
 しかし十勝岳のふもとにある望岳台からは,十勝岳火山群の全貌を把握することはできない.それどころか十勝岳の山頂も見えないので,全貌把握には少し離れた場所からの展望が必要となる(下写真).


十勝岳火山群.噴気を上げているのが 62-II および大正火口.その左の鋭いピークが美瑛岳,その右が美瑛富士.上:中富良野町北星山から.噴気の右に見えるのが十勝岳山頂.2004 年 5 月撮影.下:美瑛町美沢橋から.2022 年 5 月撮影.

 中富良野町北星山からは,やや斜めビューになるがその分,十勝岳西麓の溶岩流・火砕流の流下による平坦な斜面がよく分かる(右写真上).この写真でははっきりしないが,その平坦面の端部に望岳台がある.
 美瑛町美沢橋からは,十勝岳火山群のほぼ正面像を見ることができる(右写真下).その火山らしいダイナミックな山容には圧倒される.


望岳台モニュメント.ここから十勝岳を見渡せる好天の機会はなかなか無い.2012 年 6 月撮影.
望岳台から見上げた噴気を上げる十勝岳.その左側はおそらくスリバチ火口.その手前に小さく避難小屋が見えている.2004 年 10 月撮影.

 望岳台では,溶岩の塊で作られたモニュメントが迎えてくれる.背後の火山群は霧に包まれている.望岳台から十勝岳方面がはっきりと見える機会は,実はそう多くない.筆者の場合,その機会に恵まれたのは,望岳台に最初に立ち寄った 2003 年と翌年の 2004 年だけである.

 右下写真は 2004 年 10 月に撮影したものであるが,62-II および大正火口からの噴気が良く見える.十勝岳山頂はその後ろにあるはずだが,確認できない.

 噴気の左の大きな凹地がスリバチ火口と思われる.その手前の平坦地の上に,写真では小さくてよく分からないが,十勝岳避難小屋が立っている.

 望岳台から十勝岳への登山道は,その避難小屋を通ってほぼ直登するルートで,スリバチ河口の右を通って十勝岳山頂へと至っている.

望岳台南西方に見られる溶岩流地形.上:二重になったマウンド状段差地形.2022 年 5 月撮影.下:下部マウンドの先端部.2003 年 10 月撮影.
望岳台から北東方に見られる溶岩流地形.ブロック状溶岩流の側面露出.2022 年 5 月撮影.
観光客が歩く望岳台露岩部を上から見たもの.ブロック状溶岩流の上面と考えられる.2012 年 6 月撮影.

 筆者は火山には素人なので,望岳台およびその周辺の火山噴出物や火山地形を正確に紹介することはできない.以下は,あくまでも素人の勝手な考えであり,ぜんぜん間違っているかもしれないのでご容赦願いたい.

 右写真は,望岳台南西側の谷地形部に見られる溶岩流地形である.おそらく溶岩流の末端地形で,二段になっているのはフローユニットを示すものと考えられる.石塚ほか(2010)では,平ヶ岳火山噴出物(約 30 ~ 20 万年前)の安山岩溶岩とされている.

 右写真は,望岳台から北東に離れた斜面上の溶岩流地形で,自破砕溶岩ブロックの集積からなっているように見える.石塚ほか(2010)では,グラウンド火口溶岩(約 3,000 年前)とされているものに対応する.

 望岳台の大半は表土がなく,溶岩流の上を直接歩けるようになっている.右写真は,やや風化しているが足元に見える溶岩流の自破砕構造である.

 石塚ほか(2010)では望岳台上はグラウンド火口噴出物の火砕流堆積物が覆っていて,その下位の望岳橋溶岩は露出していないように描かれている.火砕流堆積物の上には中央火口丘溶岩が流走している.しかしその分布は,我々観光客(?)の歩くあたりには届いていないようである.したがって,この自破砕溶岩のように見える噴出物は望岳橋溶岩(約 1 万年前)と考えられるが,その正確な所属は不明である.


既存の指定など

(なし)


所在地

美瑛町 望岳台.
 遠景撮影地点: 中富良野町北星山  美瑛町美沢橋

サイトの状態:


参考文献

石塚吉浩・中川光弘・藤原伸也(2010)十勝岳火山地質図.産総研,8 p.


関連サイト

(なし)



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