私的・北海道地質百選
『沙流川スラスト』

注)このサイトは本家・北海道地質百選では,加藤孝幸さんが投稿しています.ここに掲載するものは,加藤さんの投稿 とは独立したもので,すべてオリジナルです.
なお,加藤さんの投稿写真とは露頭状況がまったく異なっており,経年変化かもしれませんが,別の露頭である可能性もあります.


 付加体およびその周辺地質体では,『低角地質構造』は常に注目される地質構造であると言える.
 北海道中央部の白亜紀~古第三紀付加体(神居古潭帯・イドンナップ帯)でも低角構造の有無は議論になるところであるが,必ずしも明らかにはなってはいないのが現状である.

 平取町岩知志付近の沙流川沿いでは,古第三紀付加体沙流川層と超苦鉄質岩との低角断層関係が大規模な露頭として観察される.ここでは,この低角断層を仮に『沙流川スラスト』と呼ぶ.


※ このサイトへのアプローチはやや分かりにくいので注意が必要である.国道 237 号線の岩知志付近から沙流川側にある農家への道を入り,農家を過ぎて奥へ進み,急な下りの道を降りていくと沙流川河原に出る.そこから,少し上流方向へ戻るとサイトがある.


沙流川スラスト(正面ビュー).2009 年 10 月撮影.
沙流川スラスト(斜めビュー).2009 年 10 月撮影.
スラスト面.2009 年 10 月撮影.

 沙流川スラストを正面(北東)から見たものが右写真である.右が上流(北西)側になる.
 スラストの上盤は古第三系沙流川層の泥岩,下盤は蛇紋岩である.断層面の走向はほぼ南北で傾斜は西に 30 度程度である.
 したがって,付加体泥岩が蛇紋岩の上に西から衝上していることになる.

 上盤の泥岩は,スラスト面から 数十 cm の範囲で “ロジンジャイト” 化し帯白色・硬質になっている(右下写真).蛇紋岩による接触変質の一つで,Ca-Alざくろ石・透輝石・緑泥石などが生じている.

 スラスト面の下盤には強い剪断すべり面があり,幅 2 cm 程度の断層ガウジが存在する.その下位は厚い(厚さ 1 m 以内)蛇紋岩剪断破砕部となっており,径 数 cm 程度の礫状の “磨かれた” 蛇紋岩包有物を含んでいる(右写真).

 付加体砕屑岩が蛇紋岩体の上に衝上していることのテクトニックな意味は,正直言ってよく分からない.西から東への衝上というセンスは,この付加体を形成した西方沈み込みのセンスとある意味マッチしている.しかし,北海道中央部の随所で見られる低角構造を作った新第三紀のプレート衝突による東からの衝上運動とはマッチしない.衝上時期・メカニズムとの関連は不明である.


既存の指定など

(なし)


所在地

平取町 岩知志.


サイトの状態:


参考文献

加藤孝幸(1978)神居古潭帯の沙流川超塩基性岩体について.地球科学,32,273-279.


関連サイト

(なし)



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