私的・北海道地質百選
『ナマコ山の傾動』
注)このサイト(の一部)は本家・北海道地質百選では,大津 直さんが投稿しています.ここに掲載するものは,大津さんの投稿 とは独立したもので,それを参考にしてはいますが,すべてオリジナルです.
下の写真は,富良野プリンスホテル 12F のレストランの窓から見たナマコ山である.室内の映り込みが悲しいがご容赦願いたい.東を見たもので,向かって右が南である.
左右(南北)に伸びる丘の,向かって左の小高い部分が朝日ヶ丘公園で,その南端の最高点(290.3 m)がナマコ山である.
※ ナマコ山というのは,現在の国土地理院地図にはない地名である.単なる俗称なのかと探ってみると,朝日ヶ丘公園の尾根の南端にある 290.3 m ピークが過去の地図ではナマコ山となっていた.
以下では,朝日ヶ丘公園から八線川-十線川まで南北に伸びる特徴的な丘陵を『ナマコ山丘陵』と呼ぶ.
ナマコ山丘陵は,実は富良野盆地を作った断層運動に関連して形成された構造地形である.それを如実に表した露頭が,上御料から流れる八線川がナマコ山丘陵を横切る場所の土取り場にある(下写真).
ここでは溶結凝灰岩とその上位の礫層が露出している.驚くべきなのは,それらが東へ急傾斜していることである.傾斜は露頭の東側では 45 度程度であるが,西側では 60 度以上あるように見える.
溶結凝灰岩は十勝溶結凝灰岩で,その噴出時期は 120 万年前である.溶結凝灰岩の上部では溶結度が低いように見え,その上位には礫層がかさなっている(下写真).
溶結凝灰岩の上位の礫層はおそらく,西方の北の峰の山地前面に形成された扇状地の堆積物であろう(上写真).礫層の中に厚さ 10 m 以下の溶結凝灰岩 “層” があり,礫層と互層しているように見えるが,これが本来の意味の互層なのかは確信が持てない.
十勝溶結凝灰岩(あるいは火砕流堆積物)とその上位の礫層がこのように急傾斜しているというのは,もちろん堆積時のものではなく,噴出後現在までに活動した活断層(御料断層)による変動の結果であり,ナマコ山丘陵は『傾動地形』であるということになるだろう.
右写真は,中御料付近でナマコ山を横断する箇所で北海道開発局によって行われたトレンチ調査で出現した御料断層である.
北⇒南を見たもので,写真中央に見える低角断層面は東傾斜,つまり西へ衝上するセンスとなっている.
御料断層の活動度についてはあまり明確ではないが,後藤ほか(2011)では,2世紀以降・1739年以前に最後の活動があったことが紹介されている.
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活断層研究会(1991)新編日本の活断層―分布図と資料―.東京大学出版会,p437.
後藤秀昭・杉戸信彦・平川一臣(2011):1:25,000 都市圏活断層図富良野断層帯とその周辺「富良野北部」「富良野南部」解説書.国土地理院技術資料 D1-No.579,12p
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