私的・北海道地質百選
『羨古丹の根室層群』

 浜中地域には根室層群の大規模な海岸露頭がいくつもあり,迫力のある非常に素晴らしいサイトとなっている.浜中町羨古丹(うらやこたん)の海岸もその一つである.


海岸の大露頭.2012 年 5 月撮影.
石灰質コンクリ―ションを含む泥勝ち互層.2012 年 5 月撮影.

 右写真は,根室層群海岸露頭の中でも最大のものの一つで,高さは 40 m を越えていると思われる.

 露出している地層は泥勝ちの泥岩砂岩互層で,驚くべきことにほぼ水平層である.同じ白亜紀(~古第三紀)前弧海盆堆積体でも,後にプレート衝突に巻き込まれた蝦夷層群とは,まったく違うということを実感する.

 なおこの露頭の上部に挟在する厚さ 5 m 程度の “層” は,その塊状(一部 nodular)の内部構造から判断して,ドレライトのシートではないかと思われるが,遠望のみの判断なのでもちろん自信はない.

 右の写真は露頭基部で観察される泥勝ち互層で,この露頭の代表岩相である.
 フィールドノートの置いてある部分は,やや膨縮した石灰質コンクリ―ション層である.

厚層タービダイト砂岩を含む互層.2011 年 8 月撮影.

 全体としては泥勝ち互層であるが,一部には厚層のタービダイト砂岩層も挟在する(右写真).こういった岩相は,西隣の奔幌戸海岸の門静層の岩相とどこか似た点がある.

 なお “タービダイト砂岩” は,岩相を詳しく確認したわけではないが,その見かけからすると,門静層と同じように凝灰質なものの可能性もある.

※ 本サイトに露出している地層の所属については,根室層群の層序に専門外の人間にとっては多少難しい点がある.
 『霧多布』図幅では,この部分は砂岩優勢の “カリカン層” となっており,露頭での観察事実と微妙に合わない.君波(1987)ではこの露頭は尾幌川層となっているが,カリカン層はその下位の門静層に含められているので,どうもよく分からない.
地層の層序区分(の変遷・歴史)というのはそういう側面があると思われるので,ここでは立ち入らないこととしたい.


既存の指定など

(なし)


所在地

浜中町 羨古丹.


サイトの状態:


参考文献

長尾捨一・石山昭三・吉田三郎(1966)5万分の1地質図幅『霧多布』.北海道開発庁,38 p.

君波和雄(1987)根室層群の層序の再検討.地球科学,32, 120-132.


関連サイト

(なし)



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