私的・北海道地質百選
『富内の白亜紀石炭層』
前弧海盆堆積体蝦夷層群は,その最上部で浅海成~河川成となり,函淵層とよばれている.そのため,函淵層を蝦夷層群から分離する考え方もある.
函淵層の堆積年代は白亜紀末期 Campanian ~ Maastrichtian であるが,一部は古第三紀暁新世にかかる部分もある.河川成の部分には,しばしば石炭層が挟在している.
富内橋西方の鵡川右岸側に露出する函淵層は,ほぼ直立~西に急傾斜しており,おもに砂岩と泥岩の互層からなる(右写真).
この互層中に,厚さ 1 m 程度の石炭層が挟在している(右写真).石炭層の上下の泥質岩も黒色を呈し,炭質であるように見える.
炭質泥岩の中には,炭化した植物破片を大量に含み乱雑な構造を示す部分がある(右下写真).
炭質物の一部は,火炎状~アメーバ状の複雑な形状を示し,注入脈状にも見えてしまう部分がある(右下写真).なんらかの植物部位なのかもしれないが,詳細は不明である.
石炭層とその周囲の植物破片を含有する泥岩層はもちろん陸成層(河川成層)ということになる.
しかし,その近傍の地層は,淘汰の良い中粒砂岩層からなり,斜交葉理を示す(右写真).おそらく浅海成層であろう.
それを証拠づけるように,この砂岩には右下写真のような大型の二枚貝化石破片を含んでいる.
太くて明瞭な肋と,それに直交する同心円状の細かな装飾がある.筆者は化石には門外漢であるが,この特徴から Inoceramus schmidti ではないかと推測するのだがどうだろうか.当たらずと雖も遠からずではないかと思っているが...もちろん間違っているかもしれない.
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高橋功二・和田信彦(1987)5万分の1地質図幅『穂別』.北海道立地下資源調査所,40 p.
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