私的・北海道地質百選
『枝幸目梨泊の付加体』

 枝幸町目梨泊(めなしどまり)~神威岬周辺には,白亜紀付加体である北見枝幸コンプレックスが露出しており,その堅硬な岩質で特徴的な鋭い岬地形を作っている(ヘッダー・サムネール).


神威岬付近の岩塔状露頭.2011 年 6 月撮影.
緑色岩露頭.2011 年 6 月撮影.

 北見枝幸コンプレックスは,北海道中央部のイドンナップ帯の北方延長であるが,イドンナップ帯の岩石が観察容易な海岸露出になっているところは,南端部の様似付近での限定された露出を除くと,このサイトだけである.その意味で貴重なサイトであると言える.

 神威岬周辺には,緑色岩体が露出している.岬の上方斜面にある岩塔(右写真)は遠目には風化の様子等,一見石灰岩を思わせる見かけであるが,図幅等の地質図によれば緑色岩体の露出となっている.筆者自身は確認していない.

 右下写真は,斜内山道脇に露出している緑色岩である.弱い層状構造が見えているが,枕状溶岩の伸長変形したものである可能性も考えられる.一部には,赤色化した玄武岩も認められる.

 これらの緑色岩は,鈴木ほか(1997)の北見江差コンプレックス・ユニット3に相当する.
 ユニット3は緑色岩・チャートの海洋性岩石スラブを主体とし,薄い含礫泥岩を含む.


神威岬公園.2011 年 6 月撮影.
神威岬公園付近の岩礁.その向こうに神威岬が見えている.2011 年 6 月撮影.

 神威岬公園付近では,石灰岩の露出が観察される(右写真).石灰岩は再結晶が激しく,白色のクロットが発達している.目視できる範囲では化石の含有は認められない.

 この付近には,赤色を呈する岩石の岩礁も見られる(右下写真).赤色チャートあるいは赤色化した玄武岩の可能性があるが,未確認である.

 なお,『神威岬公園』はその名称とは裏腹に,神威岬からはかなり離れた目梨泊側にある駐車公園なので注意されたい.


斜内山道入り口付近.2011 年 6 月撮影.
斜内山道入り口付近.2011 年 6 月撮影.

 国道から斜内山道に入ってすぐの海岸には,典型的なメランジュ相含礫泥岩が露出している(右写真).砂岩・チャートのブロックを包有する.

 泥質基質には剪断構造が顕著で,時に径 数十 cm 以上の砂岩ブロックを包有する場合がある(右下写真).

 鈴木ほか(1997)によるとこの含礫泥岩体は海洋性スラブの間の薄いセプタ状産状を示し,緑色岩中に注入するケースもも報告されている.


既存の指定など

(なし)


所在地

枝幸町 目梨泊~神威岬 神威岬:斜内山道入口:神威岬公園:


サイトの状態:


参考文献

酒匂純俊(1961)5万分の1地質図幅『目梨泊』.北海道立地下資源調査所,12 p.

鈴木隆広・川村信人・岩田圭示,1997,北海道北見枝幸地域の中生代付加体の地質構成-日高帯と空知-エゾ帯の境界地質体の再検討-.加藤誠教授退官記念論文集,93-102.


関連サイト

(なし)



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