私的・北海道地質百選
『望来海岸の地層』
注)本家・北海道地質百選の近傍サイトとして『望来海岸の新第三紀化石群』・『厚田海岸の当別層シルト岩』の二つがあります.投稿者は石井正之さんです.以下は,石井さんの投稿されたサイトからは少し離れた場所にあり,層準も一部異なっています.
札幌の北にある厚田周辺の海岸には新第三系の地層の良好な露出があり,昔から学生実習や地質巡検に利用されている.
下の写真は,石狩市厚田区古潭南方の海岸露頭で,房総かと見まごうような延々と続く海岸露頭が印象的である.海岸は楽に歩くことができ,良好な地層見学サイトと言える.
この露頭を作っている地層は新第三系の望来(もうらい)層で,堆積年代は後期中新世(5 ~ 10 Ma)である.
望来層はおもに成層シルト岩からなり,砂岩や頁岩を挟む.全体に緩く(5 ~ 10度程度)傾斜しており,その上位には,厚さ 数 m の水平な未固結砂層が載る(右写真).未固結砂層はおそらく低位の海岸段丘堆積物と思われる.
望来層の成層シルト岩は,時に硬質となり頁岩状の見かけを示す部分もある.
しばしば大型の石灰質ノジュールが含まれる.ノジュールは楕円形~紡錘形で,層理方向に伸長した外形を示すものが多い(右下写真).
望来層中には,おそらくこれまで報告されていないが,幅 10 cm 以下の小規模な砂岩脈が貫入する場合がある(右写真).その形状はほぼ平板状であるが,屈曲・食い違いを示す場合もある.
砂岩脈は,シルト岩互層中のほぼ垂直な節理(~断層)面に沿って貫入している(右写真上).砂岩脈の周囲に明らかな断層すべり・破砕面が認められる場合も多い.厚さ 1 cm 以下(mm-オーダー)の砂岩細脈が割れ目に沿って注入している産状も観察される.
砂岩脈の存在は,望来層の何らかの特殊性を示しているのではなく,“どんな地層の中でも砕屑物貫入現象は普遍的に起きている” ことを単に示しているだけのものと考えられる.
(なし)
対馬坤六・垣見俊弘・植村 武(1956)5万分の1地質図幅および説明書「厚田」.地質調査所.
(なし)