私的・北海道地質百選
『えりも岬の海成段丘』

 えりも町襟裳岬~百人浜~庶野にかけての地域には,何段かの明瞭な海成段丘が発達している(松澤,1990)(下写真).以下の段丘面区分に関しての記述は,松澤(1990)に基づく.


上:百人浜から見た豊似面.山地(豊似岳)の前面に明瞭な地形平坦面を示す.この平坦面の上にえりも町有上歌別牧野がある.写真右はじが庶野.下:百人浜から見たえりも岬方面の低位段丘面.右奥の山地前面に見えるのがヤンケベツ面.2010 年 7 月撮影.

えりも岬から遠望した豊似岳方面.山麓に見える土地利用境界が豊似面.2005 年 10 月撮影.

次の画像

パノラマ写真(上)中央部のクローズアップ.豊似面が豊似岳の山麓手前にはっきりと見える.いちばん手前の低地は海岸砂丘と後背湿地.その向こう左側には,小越面が低い平坦面として豊似面の手前に見えている.2010 年 7 月撮影.

前の画像

 この地域に見られる顕著な段丘地形面として,標高 350 ~ 200 m の豊似面と 70~40 m のヤンケベツ面,および 25 ~ 5 m の小越(おごし)面がある.
 豊似面は,この地域ではもっとも高位の平坦面で,牧場・牧草地として利用されている(右写真2枚目).

 なお,襟裳岬から北方に分布するえりも岬層はヤンケベツ面を削剥しており,その中からマンモスの歯化石が発見されている.年代は約2万2千年前で,最終氷期の堆積物とされている.


※ 猪木・垣見(1956)には,マンモス化石の産出層準は “小越層” で,小越面を削剥している地層となっている.しかし,その段丘面区分自体が松澤(1990)のそれとは大きく異なっており,筆者には当否を判断できない.


百人浜付近から見た小越面.海側にゆるく傾斜している.2010 年 7 月撮影.

付記: えりも岬周辺では,最大で標高 200 m を越える海成段丘面(豊似面)が発達することになる.海成段丘の現在の高さは一般に,形成当時の海水準とその後の地形隆起運動によって決まる.
 豊似面の形成時期についてはネット資料が見当たらず不明であるが,仮におよそ 45 万年前(MIS 12)と考えると,当時の海水準は現在より 120 m 程度低下していたとも考えられているので,単純に計算すると豊似面は 45 万年の間に 200 + 120 = 320 m 上昇したことになる.
 これは,年間約 0.07 cm の上昇量を意味している.岩石年代学的な手法によって求められた日高山脈の上昇量として 0.28 cm/年という見積もりがあり(在田ほか,2001),これは海成段丘から得られた上の数値よりも大幅に大きい.上昇の均一性や時間幅をどうか考えればよいのかは私には分からず,いずれにせよ根拠のない仮定の話である.

※ 当初この部分に豊似面の形成時期が『15万年前』であるとして記述していた.この数字は 10年以上前に調べたときのものであるが,今となってはその出典は不明である.今回,高橋ほか(2024)で豊似面の形成が MSI 12 = ca. 42-48 Ka とされていることが分かったので,そのように訂正しておきたい.
 高橋 浩・山崎 徹・吾妻 崇・村田泰章・中川 充(2024)20万分の1地質図幅『広尾』,地質調査総合センター.


既存の指定など

(なし)


所在地

えりも町襟裳岬~百人浜~庶野.
 ※撮影地点 ⇒


サイトの状態:


参考文献

猪木幸男・ 垣見俊弘(1956)5万分の1地質図幅說明書『襟裳岬』.地質調査所,22 p.

松澤逸巳,1990,第四系-襟裳岬周辺地域.日本の地質『北海道地方』,131,共立出版.

在田一則・雁澤好博・板谷徹丸(2001)日高山脈のテクトニクスと上昇過程-熱放射年代学からの検討. 震研彙報, 76, 93-104.


関連サイト

(なし)



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