私的・北海道地質百選
『住吉橋の新第三系』
注)このサイトは本家・北海道地質百選では,垣原康之さんが投稿しています.ここに掲載するものは,垣原さんの投稿 とは独立したもので,すべてオリジナルです.
今金町住吉の後志利別川にかかる住吉橋下から上流にかけて,緩く傾斜した地層のスペクタクルな露出がある.露頭規模だけではなく,弧状に湾曲した地層の紋様が非常に印象的である(下写真).これは地層自体が湾曲しているわけではなく,露頭面が川岸から緩く湾曲して傾斜を変え川底に続いているためである.
露出している地層は新第三系黒松内層で,成層・塊状シルト岩を主体とし,粗粒砂岩・軽石質タービダイト層を挟んでいる.シルト岩中には生痕化石や小型化石(珪質海綿:Makiyama)が見られるところもある.
この互層に挟在している軽石質の地層は,全体に逆級化-正級化構造を示し,単層中央部が塊状無構造となっている(右写真).上部の葉理部は斜交葉理を示している.おそらく火山性の高密度重力流堆積物と考えられる.
露頭の上流側(層位的下位)には,やや硬質な頁岩層が露出しており,一見八雲層のそれに類似している(右写真).この露頭に関する詳しい記載例はない.『道南の自然を歩く』等ではこの頁岩を八雲層のメンバーとしているが,石田・久保(1982)によれば,黒松内層とその下位の八雲層との境界は,ここで示した露頭のはるか上流にあり,このサイトに露出する地層はすべて黒松内層ということになる.
いずれにせよ,少なくとも従来黒松内層として塗色されている部分の中に八雲層 “的” な部分が含まれていることになり,両層の境界の規定は『人為的な(arbitrary)』ものとなっている.地層学ではよくあることだが,こういった岩相の遷移状況は,両層の整合関係を示唆していると考えられる.
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地学団体研究会道南班 編(2002)地質あんない 道南の自然を歩く[改訂版].282p.
石田正夫・久保和也(1982)20万分の1地質図幅『室蘭』.
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