私的・北海道地質百選
『エンルム岬のヒン岩脈』
浦河から国道336号線で様似町へ来ると,それまでの日高海岸地域らしい緩やかな砂浜が続く地形が少し変化し,様似漁港の向こうに切り立った断崖を持つ岬が見えてくる.エンルム岬である(下写真).
近づいてみると,エンルム岬を作っているのは節理の発達した灰色の貫入岩で(右下写真),含黒雲母角閃石ヒン岩(porphyrite)であることが分かる.
前田ほか(1990)によると,様似ひん岩岩脈の貫入年代は 16.5 Ma で,新第三紀中新世である.
エンルム岬から浦河方向を振り返ってみると,このような突出した岩体は,様似漁港内~親子岩~塩釜ローソク岩と西北西方向に連なっており,西北西-東南東方向の大規模な岩脈を構成していると考えられる.
エンルム岬は,その西端部にあたっている.観音山を構成している脈岩は,それに平行した岩脈なのかもしれない.
蟹江・酒井(2002)によるとこのヒン岩脈は,白亜系蝦夷層群中部層準中に貫入しているものらしいが,その露出は周辺にはなく,両者の直接の接触関係は観察されない.
親子岩周辺は『ふれ愛ビーチ』として海水浴場とキャンプ場になっている.これもヒン岩脈の作る風景の一つであり,身近な地質景観の一つとなっている(右写真).
なお,エンルム岬のヒン岩露頭は写真で分かるように,崖高が非常に高く節理・割れ目が発達しているため,崩落・落石の危険性が大きく充分な注意が必要である.特に,露頭下部のガレ場の部分にはうかつに立ち入らないように注意したい.
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前田仁一郎・宮坂省吾・池田保夫・末武晋一・戸村誠司・河内晋平・松井 愈,1990,北海道中央部の第三紀迸入岩類のK-Ar年代と火成活動の時空変遷.地球科学,44, 231-244.
蟹江康光・酒井 彰(2002) 浦河地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅), 産総研地質調査総合センター,43p.
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