私的・北海道地質百選
『古丹別層の砕屑物脈』
未固結砕屑物の貫入現象の代表的なものは砂岩脈である.それはどんな堆積地質体にも見られるものであるが,研究例は少なく,その形成環境やメカニズムは必ずしも明らかになっていない.
古丹別層は,川端層と並んで北海道中央部の代表的な新第三紀タービダイト堆積体である.それらの中には,多くの場合見逃されているが,砂・礫岩脈(・シル)が普通に存在する(例えば;川上ほか,1995).
幌加内町朱鞠内川北支流の石油沢川には,古丹別層の上部層が分布する(橋本ほか,1965).シルト岩・泥岩を主体とし,砂質タービダイト層を挟む.
砕屑物脈の代表的なものは,母岩の層理面に斜交する平板状の砂岩脈(右写真)である.
砂岩脈内にはラミナ状構造や母岩剥ぎ取り構造などが多数観察される.
右の写真は,母岩シルト岩を湾入状に浸食(truncate)する砂岩脈.湾入部は細粒で,繊細な葉理構造が見られる.砂流体中の乱流の存在を示唆するものと考えられる.
母岩の剥ぎ取りと包有構造も,さまざまな形態・パターンのものが見られる.
右下写真の例では,剥ぎ取られた母岩破片がほとんど円磨しない状態で砂岩脈中に乱雑濃集層を形成している.また,径 20 cm 程度の大きな包有物も見られる(写真の左上).いずれも,砂流体の大きなエネルギー(≒ 間隙水圧・流動速度)を示唆するが,詳細は不明である.
このほかに,礫サイズの砕屑物からなるシルも見られる(右下写真).母岩層理面に平行なシルから分岐・派生する構造も多数観察される.粗粒砕屑物脈の成因やメカニズムを考える上で興味深いが詳細な研究はされておらず,まだよく分かっていない.
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※ 見学・撮影は,GPS レシーバーをまだ所有していなかった 2003 年のもので,位置は不正確なものである.
橋本 亘・長尾捨一・菅野三郎,1965,5万分の1地質図幅「添牛内」および同説明書.北海道開発庁,92p.
川上源太郎・川村信人・地徳 力・渋谷直憲,1995,粗粒重力流堆積物パイル中に認められる液状化・流動現象-北海道,穂別地域の川端層礫岩を例として-.穂別町立博物館研究報告,11, 17-28.
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