私的・北海道地質百選
『比布の蝦夷層群』

採石場の遠景.現在も採石場として稼行が行われている.2010 年 6 月撮影.

 カタクリの群生地で有名な旭川市突哨山の東のふもと,比布(ぴっぷ)町の西端に採石場がある(右写真).この採石場には,砂岩泥岩からなるタービダイト層が露出している.
 従来の地質図幅などでは,この採石場とその周辺の地層は “日高累層群” あるいは白亜紀付加体とされているが,Kato and Iwata (1989) は白亜紀前弧海盆堆積体の蝦夷層群とした.
 採石場に露出する砂泥互層は非変形・非変成であり,Kato and Iwata (1989) の見解が妥当なものと考えられる.

砂岩泥岩からなるタービダイト互層.リズミックな互層が印象的である.2006 年 9 月撮影.

 地層は砂岩泥岩からなるリズミックなタービダイト互層(右写真)で,部分的に礫質砂岩・少量の珪長質凝灰岩層を挟んでいる.

 注意して観察すると,層理面上に漣痕(リップルマーク)や生痕化石を発見することができる(下写真).


左:層理面上のリップルマーク.2004 年 5 月撮影.右:タービダイト砂岩底面に見られる生痕化石.曲がりくねったものと,装飾をもつ棒状のものとの2種類あるが,詳細は不明.2004 年 5 月撮影.

砂泥互層中の大規模な砂岩脈.1989 年 9 月撮影.

 現在は確認できないが,以前は砂泥互層中に大規模な砂岩脈貫入を観察できた(右写真).貫入方向は層理面に低角で斜交している.やや膨縮しているが厚さは 数十 cm 以上で,蝦夷層群中の砂岩脈としては最大級のものであろう.砂岩脈の下に見える互層はスランプ褶曲しており,なんらかの成因的関連性が想起される.

 この露頭付近からは時代を示す化石は発見されておらず,露出が孤立していて上下の層序関係も不明なため,蝦夷層群のどの部分に対比されるかは明らかではない.
 ただし,北方の鷹栖地域や石狩川を隔てた当麻地域の蝦夷層群相当層からは,白亜紀新世前期の化石が発見されている(加藤ほか,1986など).比布地域の蝦夷層群相当層も,その岩相の類似性から,蝦夷層群中部にあたると考えられる.


既存の指定など

(なし)


所在地

比布町 突哨山北東方.


サイトの状態:


参考文献

Kato, Y. and Iwata, K., 1989, Radiolarian biostratigraphic study of the Pre-Tertiary System around the Kamikawa Basin, central Hokkaido, Japan. Jour. Fac. Sci., Hokkaido Univ., ser.4, 22, 4252-452.

加藤幸弘・岩田圭示・魚住 悟・中村耕二, 1986, 北海道中央部,当麻-開明地域に分布する先第三系の再検討.地質雑,92, 239-242.


関連サイト

(なし)



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