私的・北海道地質百選
『様似の蝦夷層群』
北海道中軸部(空知-エゾ帯)の白亜系蝦夷層群の分布は,南端部の浦河地域では西北西~東南東方向となり,その東端は様似町付近で南北性の断層によって切断されてイドンナップ帯の付加体と接している.
様似町市街地のすぐ北にある採石場あとでは,蝦夷層群の東端部の地層を見ることが出来る(右写真).
岩相は厚層理の砂質タービダイトで,層理はほぼ直立している.岩相的には蝦夷層群下部層準のものと似ているが,蟹江・酒井(2002)では “中部蝦夷層群” となっており,正確なところは分からない.
タービダイト砂岩中には泥リップアップクラストを大量に含むものがある(右下写真).クラストは円磨した外形を示すものが多いが,層理面に垂直な方向に扁平になっている.炭化植物破片状の黒色チップを含むが,詳細は不明である.
蝦夷層群の分布は実際には様似川の東側にも延びているが,簡単に確認できる露頭としては,この採石場あとのものが事実上最東端のものと言える.しかしその岩相は,他の地域の蝦夷層群と大差ないように見える.
蝦夷層群は白亜紀の前弧海盆堆積体なので,その東側,白亜紀付加体との間には少なくとも当時の海溝斜面堆積体の存在が期待されるが,そういったものは見つかっていない.イドンナップ帯西縁の断層によって失われていることになる.
そういう意味で,この様似地域の蝦夷層群は,あくまでも “分布の東端” であって,蝦夷層群の東端ではない.
なお,この露頭は採石場あとであるが,少なくとも 2007 年の時点で露頭は養生されておらず,岩盤崩落・落石等非常に危険な状態である.ヘッダーのサムネールに見る通り,もちろん立ち入りは禁止されているので,遠望のみとしたい.
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蟹江康光・酒井 彰,2002,5万分の1地質図幅『浦河』および同説明書.地質調査所.
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