私的・北海道地質百選
『赤はげ礫岩』
福島町から白神岬方面に向かうと,途中に戸谷覆道がある.その手前の斜面を見上げると,特徴的な赤紫色の露頭が見える(右写真).これが『赤はげ礫岩』である.
礫岩の構造は遠目にはよく分からないが,その中の砂岩のはさみは,向かって右側に急傾斜しているように見える.
赤はげ礫岩は,この地域の新第三系の最下部にある福山層の基底礫岩で,約2千万年前のものである.福山層は,渡島帯のジュラ紀付加体を不整合に覆っており,陸成の安山岩溶岩や溶結凝灰岩を主体としている.
赤はげ礫岩の露頭に接近して見ると(右写真),遠目で見るよりも大きな礫が含まれており,迫力がある.
付加体を構成する泥岩・砂岩やホルンフェルスのほかに,花崗岩質岩・安山岩・溶結凝灰岩の礫も含まれている.
礫岩の中には薄い砂岩のレンズも含まれており,おそらく扇状地性の河川成堆積物と考えられる.特徴的な赤紫色は,陸上風化による水酸化鉄の沈着によるものであろう.
赤はげ礫岩の向かって左下にはジュラ紀付加体が露出しているが,植生のため不整合面ははっきり分からない.秦ほか(1990)の文中写真(第21図)によると,以前この南方地点でスペクタクルな不整合面が観察できたらしいが,現在は道路法面被覆等により見ることはまったくできない.新第三系基底不整合の記録として貴重な露頭であるが,鮮明なカラー写真は公開されておらず,残念である.
この赤はげ礫岩が堆積した当時は,日本海がまだ大きく開いておらず,西南北海道はアジア大陸の東はじに近いところにあった.赤はげ礫岩は,その頃の面影を私たちに感じさせてくれる.この後,西南北海道は本格的な日本海の時代へと移っていく.
(なし)
秦 光男・箕浦名知男・大沼晃助・加藤 誠,1990,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)『松前地域の地質』.地質調査所,98 p.
(なし)