私的・北海道地質百選
『鮪ノ岬の柱状節理』
乙部町から海岸に沿って北上すると,鮪(しび)ノ岬という変わった名前の岬がある(下写真).
これは,新第三紀の安山岩岩脈が造っている岬で,見事な柱状節理が観察でき(八幡,2002),北海道の天然記念物となっている.
岬の名前は,鮪(=マグロ)の魚体を思わせるその独特な曲線美に由来するものであろう.
トンネルを出たところにある駐車場には,柱状節理をイメージした天然記念物モニュメントが設置されている(右写真).
鮪ノ岬を遠くから見ると,柱状節理を持った安山岩溶岩層が “二段重ね” のようになっている(上写真).溶岩流が上下2枚あるのだろうか?
露頭に接近して観察すると,1枚の溶岩の中で柱状節理が上に凸形状で湾曲しているだけで,なにか不連続面があるわけではない.
露頭の下部ではその縦断面が,上部では横断面が見えていることが分かる(右下写真).これは『車岩』と呼ばれている.
この少し不思議な柱状節理露頭の構造に関する解釈としては,節理面が湾曲し露頭上部では “柱” が水平に近く下部では垂直に近いため,分離面が露頭上部では節理に垂直に近く下部では平行に近い,ということなのだろう.
その “変曲面” がちょうど露頭中央部に近いところにあるためと考えられる.
いずれにせよ,この鮪ノ岬の柱状節理は,その規則的・幾何学的な形状が類のないほど見事なものであるということは間違いない(右写真).
北海道指定天然記念物.1972(昭和 47)年 4 月 1 日指定.
八幡正弘(2002),車岩に見られるマグマの冷え方-鮪ノ岬.『道南の自然を歩く』,地学団体研究会道南班編,141-142.
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