私的・北海道地質百選
『コハク含有層』

※ このサイトは 2013 年に,ある研究者の方々に案内されて見学した.そのご希望により,場所・地質体を非公開とする.
実はこのコハク含有層は,2007 年に既に他の研究者によって学会発表されており,この場所の地域ミュージアムにも堂々と展示されており,かつ案内者の方々もこのあと国際学会で講演されているというものである.驚いたことに,ヤフオクにも現物が出品されている.したがって,いまさら非公開にする必要は?とも思うのだが...案内者の方にもいろいろご都合があると思うので,既にロックは外れているのかもしれないが,以前一度聞いていまさら何度も聞くわけにもいかず,当時そのままの扱いということにしたい.


 コハク含有層というと国内では岩手県久慈市のものが有名である.その母層(上部白亜系)の堆積環境は浅海(上部外浜)~陸上(氾濫原)とされている.つまり,コハクはほぼ “現地性” ということである.
 しかし,本サイトの母層はタービダイト・シーケンスである.砕屑物として extremely fragile なコハクが(重力流の中でとはいえ)長距離運搬されてこのようなことになっているというのは,ある意味コハク含有層としては非常に特殊なものということになるのかもしれない.


厚層理タービダイト露頭.層理面は急立し向かって左へ傾斜している.右に低角で傾斜する面は節理面である.2013 年 10 月撮影.

 上の写真は,コハク含有層(母層)の露頭で,厚層理タービダイト互層である.露頭状況がなにか不自然であるが,そこはシークレットである.


母層の岩相.左:タービダイト互層.右:タービダイト間に見られる葉理部.黒色葉理部は陸上植物破片濃集部.2013 年 10 月撮影.
葉理面上に大量に含まれる陸上植物破片.2013 年 10 月撮影.

 コハク含有層の岩相は,いわば “普通” のタービダイト層で(左写真左),特に不審な点はない.
 ただし,タービダイト単層上部あるいは単層間には,かなりの規模で葉理部が発達する(左写真右).

 その葉理の多くは,陸上植物破片濃集部となっている(右下写真).
 時には長さ 7 -8 cm に達する破片が存在する.破片の配列には,有方向性は特に認められない.


コハクのさまざまな産状.上から: 1.葉理状に大量に濃集するコハク破片.2.その産状を葉理面上から見たもの.3.葉理中に単独で散在する微小なコハク破片.円磨している.4.不淘汰シルト中に単独で含まれる巨大なコハク塊.5.同.コハク塊は径 20 cm 以上であるが高さがほとんどなくしかもバラバラに見える.押しつぶされているのか,あるいは単に露頭面の残留部なのか.その右下は大きな炭化材(・茎)破片.2013 年 10 月撮影.

 コハクの産状は多様なものであるが,筆者が見た限りでは,タービダイト単層の粗粒部(Ta-b)に含まれているものはなく,単層上部(Td)あるいは単層間の葉理部に含まれている(右写真上の3枚).
 この産状では,コハクは破片状で,時には mm オーダーのコハク粒子が葉理中に散在する場合がある.

 もう一つの特徴的な産状として,タービダイト単層間の『含植物破片不淘汰乱雑シルト層』に大きなコハク塊が単独で含まれる場合がある(右写真下の2枚).この部分に含まれる植物破片(材・茎)は,時に長さ 20 cm に及ぶ場合がある.
 この植物破片を含む乱雑シルト層の堆積学的な意味は,不勉強な筆者にはまったく分からない.しかし,他のタービダイト・シーケンスの中にも同様なものが挟在する例がいくつかあり(ex. 千鳥が滝・判官館),なんらかの共通した意味があるものと推察している.

 このコハク含有層を見て筆者の頭の中に当初湧いたイメージは次のようなものである.洪水の氾濫により氾濫原の森林内に散在していたコハク塊が移動し,どこか(どこなのか?)に一次定着する.それが乱泥流の発生により二次移動し...
 しかし当然であるが,そのイメージでは説明できないあるいは説明が難しい点が多々ありそうである.もっとカタストロフィックなイベントを想定する必要があるのかもしれない.

 このコハク含有層の形成メカニズム・環境の詳細の解明については,案内者の方々の研究に期待したい(もう既に公表されているのかしれないが).


既存の指定など

(なし)


所在地

(非公開)


サイトの状態:


参考文献

(なし)


関連サイト

(なし)



私的・北海道地質百選のトップページへ戻る