私的・北海道地質百選
『ルーラン岩礁』
日高山脈が海に没するところ襟裳岬には,実は山脈の中核をなす日高深成・変成岩類は分布していない.
それらは,えりも町庶野の南,ルーラン~千平(ちびら)の海岸に岩礁として露出している.これが日高変成岩類の露出の南限である.北海道の地殻深部変成岩の唯一の海岸露出として貴重な場所である.
岩礁の観察が容易な部分(右写真)は,位置的には千平岩礁と呼ぶのが適切であろう.ルーランという地名はこの約 1 km 北東にあり,そこも岩礁となっている.
しかしこのページで紹介する岩礁は,私の学生時代から北大界隈では伝統的に『ルーラン岩礁』と呼ばれている.その由来は不明である.
千平の集落から海岸に出るには,段丘面から降りる踏み分け部があるので容易である.しかしその途中には昆布干場があり,そこには踏み入らないように注意が必要である.海岸に出るとその先に観察場所が見えてくる(右写真).
日高変成岩類の変成岩岩石学的なことについては筆者はまったくの素人で詳細・正確な記述は不可能である.興味のある方は,専門家による 2018年地質学会巡検案内書(高橋ほか,2018)などを参照していただきたい.
ルーラン岩礁に露出するのは,日高変成帯主帯上部層に属する黒雲母片麻岩(右写真上)と菫青石トーナル岩(写真右下)である.
黒雲母片麻岩中には紅柱石の斑状変晶が含まれる場合があり,海岸の転石の磨かれた面などを注意深く見ると発見できる.
トーナル岩は非均質な岩相を示し,片麻岩中にシート状に貫入しそれを捕獲している.両者の境界は不規則で,場所によっては漸移的(ミグマタイト様)に見えるところもある(右写真上).
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高橋 浩・志村俊昭・加藤聡美(2018)日高変成帯南部の深成変成岩類.地質学雑誌,124,399–411.
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