私的・北海道地質百選
『中頓別鍾乳洞』

注)このサイトは本家・北海道地質百選では,田近淳さんが投稿しています.ここに掲載するものは,田近さんの投稿とは関連がなく,すべてオリジナルのものです.


 鍾乳洞と言うと,日本列島では古生代~中生代の巨大な海洋性石灰岩体中のものが一般的であるが,ここで紹介するのは,新第三紀の浅海成貝殻石灰岩中の鍾乳洞という,少し珍しいものである.


軍艦岩.2011 年 6 月撮影.
鍾乳洞内部の壁面に見られる成層構造.ほぼ水平である.2011 年 6 月撮影.
鍾乳洞内部の壁面.2011 年 6 月撮影.

 中頓別町の山中に,このような目を惹く露頭がある(右写真).軍艦岩と呼ばれているこの岩体は,ほぼ水平な成層構造が明瞭な石灰岩である.

 周囲の地層は新第三紀中新世~鮮新世の中頓別層で,石灰岩体の中には,狭いながら鍾乳洞が形成されている.そ 発見は 1933 年のこととされている.

 展示施設を通って鍾乳洞内部に入洞すると,その壁面には見事な成層構造が見られ,有名なアリゾナ-ユタ州の “The Wave” (=ジュラ紀砂漠成砂岩の斜交成層が作る造形模様)をなんとなく彷彿とさせる(右下写真).

 壁面に近寄って観察すると,石灰岩は貝殻の集積からなっており,礫が散在していることが分かる(右下写真).浅海相中の貝殻石灰岩層である.貝殻を注意して見ると紫がかったカラフルなアラゴナイト層の真珠状光沢がそのまま残っており,新規地層の中の貝殻石灰岩であることが実感できる.
 貝殻は高清水(2009)によるとフジツボ主体となっているようだが詳細は分からない.

 この貝殻石灰岩は,高清水(2009)によると,『冷水性炭酸塩堆積物』とされている.残念ながら古生物-古環境に疎い私には,それ以上のことは分からない.


『さるふつ公園』道の駅そばの国道脇に展示されている石灰岩岩塊表面の二枚貝化石密集部.2011 年 6 月撮影.

 なお,鍾乳洞から北へ約 40 km 離れた道の駅そばの国道脇に,大きな貝殻石灰岩体が展示(?)されている.

 詳しい産地や層準等は明記されていないが,パネルには “中頓別町産” とあり,おそらく中頓別鍾乳洞あるいはその相当層準から採取された岩塊であろう.岩塊表面にはホタテガイを主体とする二枚貝化石のキャストが密集しており,貝殻石灰岩の岩相であることが分かる.円礫を多量に含んでいて,瀬棚層中の貝化石床のように掃き寄せ作用(あるいはストーム?)による bar-ridge を形成したものと思われる.


既存の指定など

北海道指定天然記念物.昭和32年1月29日指定.


所在地

中頓別町 字旭台.


サイトの状態:


参考文献

髙清水康博,2009,冷水性炭酸塩堆積物を含む新生代中頓別層の形成過程:北海道天然記念物中頓別鍾乳洞とその周辺地域の地質から.北海道立地質研究所報告,no.80,39-49.

小山内 煕・三谷勝利・石山昭三・松下勝秀(1964)5万分の1地質図幅『中頓別』及び同説明書.北海道開発庁,58 p.

関連サイト

(なし)



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