リップダウン層





どんどん毛色の変わったやつを紹介していきたいと思います.

これは,川村・川上(2005)で学会発表したもので,場所は宮城県南三陸町(旧志津川町)神割崎付近の海岸露頭です.道地質研の川上さんに教えてもらったものですが,地層は三畳系陸棚相の大沢層です.

で,何が面白いかというと,タービダイト砂層の上面がこのように未固結時変形をしているということです.そんなの良くあるんで何が面白いって...? 黒いのは泥リップアップクラストでしょ?

そうじゃないんです.これはタービダイト砂層の上半部が液状化して上方注入・側方流動化を起こし,上位の葉理シルト岩を『リップダウンクラスト』(Chough and Chun, 1988)として包有している,というものです.少なくとも私はそう考えています.




これはその上面部の拡大写真ですが,砂層は砂岩脈・シルの集合部になっています.写真右側に明瞭な砂岩脈が見えています.以前,ある人にこの露頭を見せたとき,『ただのリップアップクラストを含む厚層タービダイトなんでは?』と言われましたが,こういった注入構造や砂層のドームアップ構造(上のパノラマ写真の中央部)などを考えると,そういう見方は否定されます.




ということで,この形成スキームを無理やり書いてみるとこんな感じになります.大沢層の露出を他のところでいくつかチェックすると,この『incipient ripping』が実際に見えるところがあります.

となると,こういう現象がタービダイトシーケンスの中で普遍的なものなのか,あるいは何らかの特殊な環境・状態を示すものなのか...?が気になるところですが,いまのところ事例がこれ一つなので,なんとも言えない,といったところです.

ところが...(別アーティクルへ続く)

2010/11/05 10:53:45


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