凝灰岩の未固結時変形と水抜け構造





このサンプルは,私が採集したものではなく,学生地質実習の際に,3年生の学生が採集したものです.『切断して観察しろ』と命じておくとやってくれたんですが,その切断標本を見て,私はけっこう仰天しました.
珪長質葉理凝灰岩ですが,層準は蝦夷層群中部,場所は日高町サンゴの沢下流部です.

サンプル下部のコンボルーションというか,ball-and-pillow 構造のなりそこないの見事さにもびっくりしますが,真ん中の未変形凝灰岩層に見えた単層内部が完璧に流動変形しているのにもびっくり.
おまけにその上の micro-slumping というかなんと言うのか分かりませんが,微細複雑な未固結時変形,うそでしょ?!状態です.眼が洗われます.

で,極め付きが,真ん中の変形層の中の右側に見える水抜け(water-escape)構造です.




右の写真はそこを切り抜いたものですが,何度見ても惚れ惚れします.形態としては漏斗状構造(funnel structure)というべきものでしょう.
その水の起源は,最下部に薄く見える粗粒砂質層であることがはっきり見えています.そこから割れ目(既存?水圧破砕??)を水が伝って凝灰岩層へ入り,それを流動化(fluidization)させて漏斗を作ったものと思われます.
漏斗の最上部が,『micro-slump部』によってカットされているのか,それとも『堰き止められて』いるのかは,微妙なところで良く分かりません.

いずれにせよ某3年生,すごいサンプルを採ってくれたもんだな...と心底思います.同時に,『このようなものがほとんど見逃されている』ということも...

2012/10/31 10:37:29


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