襟裳岬の礫岩
襟裳岬は風が強くて寒いところです.私は,心がけが悪いのかもしれませんが,今まで何度も行ってますけど,晴れて暖かったということが一度もありません.たいていは霧や霧雨...突風に吹かれてお気に入りのフィールド帽を崖下に飛ばしてしまったりとか.
この写真は,突端の展望台へ行く途中の遊歩道から撮ったものだと思いますが,ここに見える先端部に何が露出しているのかは,見た人があまりいないのでは?...なんて,別に難しい場所というわけではなくて,漁村のおばさんが昆布を採っているような,のどかな場所ですけど.
岬の突端の浜に降りると,こんな立派な礫岩が露出しています.地層は襟裳層で,従来は中新統(川端相当?)と思われていたものですが,栗田・楠(1997)によって渦鞭毛藻化石が発見され,後期漸新世(23~28 Ma)の地層であることが分かっています.
特徴的なのは,一部巨礫にもなる黒雲母花崗岩礫です.そのほかに,薄緑色なのが玄武岩質岩,黒いのが泥岩の礫です.この花崗岩礫は,在田ほか(2001)によって年代測定が行われており,33~30 Maの年代値が得られています.思ったより地層年代と差がないですね...急激な上昇が起こったということになりそうですが,いったいハイマートはどこにあったんでしょうか?
あとこの礫岩層,このブログでも紹介している有名な強変形礫岩『歌露礫岩』の源岩です.変形の before/after をイメージしてみると,新第三紀の変形とはいえ,すごい変形だな...と思ってしまいますね.
もうちょっと周りを見渡してみると,この礫岩の堆積状況を示す立派な露頭が目につきます.左に写っているのは,現地質研の川上源太郎さんです.撮ったのは,2001年6月だったと思います.斜めに立っているように見えるのは,パノラマ合成の効果によるもの?
礫岩層は,左上位の級化構造を示し,成層シルト岩(渦鞭毛藻はこの岩相から?)と互層する重力流堆積物です.弱く成層して,traction carpet か?と思われるような個所も.
それにしても,層厚と言い礫径と言い,圧倒されるようなすごい堆積エネルギーです.
2014/03/20 13:40:28