10のタービダイト神話





もうすぐ夏休みなんですね...いやはや.
今回の話は,海外の学術論文に関するものです.勉強不足の私としては実に,珍しい.

タービダイトの研究者として G. Shanmugam の名前は有名です,私でも知ってました.しかし,いったい何と読むのだろう? 最初は『シャンマグム』なんて読んでましたが,良く見ると『シャンムガム』なのか?? まあどうでもいい話です.

で,その Shanmugam がいまから10年以上前, 2002年に書いた論文...というか,講演から起こしたものらしいのですが.専門のタービダイト研究者だったらもちろん知っているものだと思いますが,私は最近になって読みました.そのタイトルが『Ten turbidite myths(タービダイトに関する10の神話)』という刺激的なものです.これだったら私でも読んでみたくなります.(^^; 『10の神話』とは何かというと,下のようなものです.英語力のない私なので,訳文は稚拙かも.すいません.

神話1『混濁流は複数の砕屑粒子支持機構を持った非乱流である』
神話2『タービダイトは土石流・粒子流・液状化流および混濁流の堆積物である』
神話3『混濁流は海底峡谷での高速流でありそれ故に証拠提示を免れる』
神話4『高密度混濁流こそが真の混濁流である』
神話5『スラリー流は高密度混濁流である』
神話6『フルート構造はタービダイト堆積を示している』
神話7『正常級化構造は複数の堆積イベントの産物である』
神話8『斜交層理は混濁流の産物である』
神話9『タービダイト堆積相モデルは混濁流による堆積作用を解釈するのに有用なツールである』
神話10『タービダイト相は地震波層序断面の相とジオメトリを解釈できる』

うむ,なるほど...神話3や5のように国内の地質屋にはちょっとなじみにくいタイトル・内容もありますが,どれも『え?そうじゃなかったのぉ?!』というものばかり.面白いです.

この論文(講演記録)の全体を紹介するのは(私には不可能だし)やめときますが,読み終わった感想としては;

タービダイト研究の世界には,原理主義者と現実主義者がいる.Shanmugam は前者.Lowe, Mutti, Kuenen などは後者.両者はかなり仲が悪い?! 論文中にも,flawed とか muddled なんて表現がガンガン出てきます.

しかし,density-stratified gravity flow は turbidity current じゃない(そのとおりなんだけど),なんて言われてもな...こうなったら,現実の density-stratified gravity flow になにか別の(turbidity, debris, grain, liquefied 以外の)名前を与えてしまって,『その一部は turbidity current の産物』とか言うのも手かもしれません.

あと,タービダイトの上部ディビジョンが gravity flow の直接の産物ではなく底層流(その多くは tidal だとか)によるリワークだというのは少し意外だったけど,なるほどな,と思いました.

授業でタービダイトの話をするのが怖くなってしまったというか.:-p でも地学初心者の2年生にはブーマシーケンスの話をするしかないんですよね.

非専門家の感想なので,まったく外してるかもしれません.

ちなみに先頭にあげた写真は,論文の内容とはまったく関係のない(?)昔私的巡検で見た和泉層群のタービダイト互層です.通行量の多い国道沿いにあった露頭なのでびっくりして見た記憶があります.懐かしいな...

2014/07/24 13:15:00


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