渡島帯の先カンブリア紀砂粒
やっと続きを書くことができます.
砕屑性ザクロ石のおかげで,渡島帯QF砂岩の供給源中に高度変成岩の存在が見えてきました.しかしそれだけでは,先ジュラ紀ということまでは分かっても,それ以上のことが分かりません.極端な話,飛騨帯かなんかのペルム紀のものかもしれない...
そう考えているとき,岩手大学の土谷信高さんから,渡島帯QF砂岩の全岩Rb-Sr比を計っているという話がありました.彼の意図はおそらく,西部北海道の白亜紀花崗岩類の起源物質を探るということだったと思いますが...この未公表データは川村ほか(1991)に紹介しています.土谷さんの火成岩石学的目論見とは関係ない意味合いになりますが,Sr初生値を一般的な値に仮定すると,だいたい 400-620 Ma という砂岩の“(擬似)アイソクロン年代”が得られるというものです.もちろんこれでは何のデータにもなりませんが,そのけっこうな古さに,『やはり』と感じました.
その後,(不幸な事故で亡くなられましたが)渡辺暉夫教授がオーストラリアに短期留学し,その際 SHRIMP年代を計るんだという話を聞きました.渡辺さんから言い出したことだったかはもう覚えていませんが,渡島帯QF砂岩中のジルコンの SHRIMP 年代を計ったら面白いだろうという話になり,当時大学院修士課程で渡島帯の粗粒砕屑岩を研究していた安田直樹君の砂岩試料を彼が処理してジルコン抽出を行い,それを渡辺さんがオーストラリアに持参して測定を行ったわけです.その結果は驚くべきものでした.
この図がその結果ですが...Pb-Uのコンコーディア上に,1800Ma, 2500Ma というクラスタが二つ,明瞭に認められます.
つまり,渡島帯QF砂岩(海溝堆積物)は,東アジア大陸の原生代の岩石を供給源としていたということが明らかになったわけです.これは北海道では始めての先カンブリア紀年代であり,おそらく東北日本でも砕屑性ジルコンとしては初めての先カンブリア紀を示す年代値だったと思います.
北海道はもちろん,日本海のオープニング以前は沿海州のどこかかにでもくっついていたわけですから,この年代というか供給源は,ある意味“当たり前”なわけですが...それを具体的に証明した意味は大きかったと思います.
ここまでくるのにはかなりの紆余曲折があったわけですが,やはり砂屋として『最初感じた匂い』は幻覚ではなかったと...(^^;
2009/09/09 14:53:22