アルパイン断層





クライストチャーチを襲った地震ではまだ多数の日本人を含む被災者が行方不明となっており,痛ましい限りです.

で,この地震のセッティングが気になっていたのですが,某新聞の科学欄の解説を見て私は仰天しました.この地震に関係の深いアルパイン断層が,ニュージーランド南島を斜めに横断する横ずれ断層だということは知っていたのですが,その南北延長にはそれぞれトンガ(-ケルマディック)海溝と,なんとかいう海溝(名前忘れた)が連なっており...トンガ海溝がオーストラリアプレートに太平洋プレートが沈み込んでいる.これはまあ当たり前ですよね.北島にはタウポ火山とか有名な島弧火山帯があるし.
ところが,アルパイン断層の南に接合する海溝では,バージェンスが逆転し,『オーストラリアプレートが』太平洋プレートの下に沈みこんでいるというのです.はぁ?! 大陸プレートが大洋プレートの下に沈み込むなんてそんなことがあるんでしょうか? 嘘だろ.海溝の東には火山は存在していないようですし.

...で,いろいろ調べてみると,ホントでした.ただちょっと言葉の問題というか,大陸プレートが沈み込んでいるというのは,ちょっと違うみたいな感じがします.ニュージーランドの研究者の描いた構造断面図を見ると,沈み込みというよりは,オーストラリアプレートの上に太平洋プレート(というか,後述)が乗り上げているように見えます.
そういえば,1980年代のPT華やかかりし時は,obduction なんて言葉が盛んに使われた時期もありましたが,あれは今どうなってしまったんでしょうね...

上の図は,Google Earth から借りた海底地形図の上に私があれこれ描き込んだものですが...気になるのは,南島の南東部に広がるプラットフォーム状の海底地形です.南島のアルパイン断層の南東側には,有名なハースト片岩などからなる変成付加体が(めくれあがって)分布していますので,構造断面を見る限り,このプラットフォームはその上部構造のようです.これらが付加体であれば,その東側に沈み込み境界が存在していたはず.

ということで,もちろん門外漢の私には正確なことは分かりませんけど,もともとトンガ海溝はその南に連続していて,付加体を作っていた.それが,何らかの理由(オーストラリアプレートの前進?)で,南側が横ずれ断層に転化し沈み込み帯が消滅,付加体が上昇して,その西側にオーストラリアプレートが衝突している,ということのような気がするんですが,どうなんでしょうね?

2011/02/28 11:16:16


コメント:
 アンモナイト (2011/03/02 18:14:30)
  ニュージーランドの地質についての予備知識は、皆無でしたが、テレビの解説を聞いて、私も同じ感想を持ちました。
まず、北島と南島の間に太平洋海嶺からのトランスフォーム断層が通っているのではないかと思いました。
次に地質を調べるとアルパイン断層付近は四国の中央構造線付近と似ていて、外帯側が片岩類からなり白亜紀頃の古いものだったので、太平洋プレートの初期のものではないか?
プレート同士は衝突したが、潜り込みはなく、南東側に太平洋プレートが撓んでプラットフォームができているのでないか?
なお、オーストラリアプレートは、北進しているようです。

コメント:
 mkawa (2011/03/03 11:29:49)
  アンモナイトさん
はじめまして.コメントありがとうございます.北海道の方ですか?
アルパイン断層そのものがトランスフォーム断層だという見方もありますね.なお,文献によっては Puysegur海溝も沈み込み縁ではなく横ずれ断層だと書いているものもありました.
なんにせよ複雑だな...と感じます.

コメント:
 アンモナイト (2011/03/03 14:27:04)
  mkawa さん
突然のコメントで、失礼しました。 自分は、昔北海道でアンモナイトの化石を採取したことはありますが、道産子ではありません。
私が想定した断層は、アルパイン断層・プレート境界を横断する東西方向のものでした。丁度、中央構造線をさえぎるようになっているフォッサマグナのような・・ 単純な発送ですが。(笑)


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