幌延深地層研





先日,幌延町の深地層研を見学してきました.と言っても,竹下先生の研究グループの共同研究打ち合わせの際に立て坑の見学があるというので,部外者としてくっついて行っただけのものです.

行ってみて驚いたのは,施設全体が一般客に開放されているということです.立て坑の見学も,申し込みが必要なようですが,一般人もOKということになっているのは初めて知りました.それなら,単独で行ってもよかったのかぁ...f(^^;

立て坑は一本が今完成に近付いていて,その横にもう一本を掘り始めているようです.




立て坑の中は,エレベーターケージで昇降しますが,降りるときは途中からぐんっとスピードが上がるので,ちょっとドキッとします.研究者見学の時は290mの下層レベルまで入るのが普通らしいのですが,この時は何やら事情があるようで,一般見学者も入る170mレベルでの見学となりました.
 右の写真は立て坑内の様子ですが,右下に横坑が開いているのが分かります.




私の当初のイメージでは,横坑内にもっと岩盤が露出していると思っていたのですが,切り羽も含めて,ほとんどすべてコンクリート覆工に覆われており,ちょっと残念でした.坑道の安定性を考えると,まあ当たり前なのですが.
 左の写真は,それじゃあまり親切でないということなのか,一部の覆工に穴をあけて岩盤が見えるようになっているところです.手前にこの岩盤から産出したらしい貝化石が置いてあります.
 新第三系のシルト岩(シェール?)だと思いますが,割れ目も少なく極めて安定した良好な岩盤でした.これは,私が検討委員をしている函館の新幹線トンネルの館層岩盤でもそうなので,新第三系のシルト岩系の岩盤はどこでもこういうものなのかも.




で,これが今回の私の一番の関心事を説明した設置パネルです.下部が湧水で滲んでしまってますが...要するに,100mオーダーの深度での岩盤中の応力分布はどうなっているのかと...単純に考えるとσ1はほぼ垂直だと思いますが,それ以外の応力軸は..?
 残念ながら時間がなくて,説明してくれた深地層研の方から詳しい話を聞くことはできなかったのですが,パネルから読めるのは,水平面内の最大主圧縮応力は土被り圧(静岩圧)とほぼ等しい.σ1が静岩圧より大きいとは考えられないので,σ1≒σ2ということなんだろうと.
 で,その水平面内最大主圧縮応力軸は北東-南西ということなので,これはこの辺の広域的応力場とマッチしているのではないかと思います.当たり前という感じではありますが,面白いですね.

このような核廃棄物の処分場を念頭に置いた研究施設については,いろいろと意見・疑問のあるところだと思いますが...地層の一研究者としては,『地層』という語が入った名前の公的研究施設はほかにないので,なんとなくシンパシーも湧いてきちゃうんですね.
 ただこれは行ってみて初めて知ったのですが,この『深地層』というのは,必ずしも私の研究対象である地層だけを意味する言葉ではないようです.つまり,中部地方にもう一つある深地層研の対象岩盤は花崗岩ということなんで...

2011/12/05 10:55:54


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