泉郷活断層
ちょっと毛色の変わったやつを.これは,千歳市泉郷(いずみさと)にある活断層地形です.活断層なんて私の専門から遠く離れたものですが,なんで?
実は数年前,教養1年生の自然科学実験を担当することになり,そのテーマの一つとして,地学野外巡検が導入されました.私自身はなんとなく気が乗らなかったのですが,当時の某教授が大学上層部に出した文書の中に『フィールドを重視した教養教育』とかなんとか書いてしまったので,やめるわけにはいかなくなってしまったのでした.
で,責任者になってしまった私は,悩みに悩みました.北大から日帰りで何箇所か回れるルートで,ということになるわけですが,そうすると,火山灰・貝塚・地層,まではすぐに決まったのですが,もう一箇所がなかなか見つかりません.しょうがないので,これらの移動ルート上にある『活断層地形』=泉郷断層を見せようか,ということになったわけです.
しかし上の写真をご覧になるとお分かりのように,ただの畑の中の低い土手(逆向き断層崖 or 撓曲崖)なので,地学が専門でもない1年生には分かりにくいというか...実験科目が終わったときに受講者からアンケートをとるのですが,毎年『分かりにくい・分からない』という回答が圧倒的でした.まあいいさ.
写真を見ると分かる人は分かりますが,畑の畝の undulation を見ると,正面に見える土手の形が分かると思います.ちなみに背景に見えるのは恵庭岳・風不死山などの支笏カルデラの外縁山です.樽前山が林に隠れているのがちょっと残念.
正面から見ると分かりにくいので,横に回ってみると,もうちょっと分かりやすくなります.左側の住居のすぐ右を泉郷断層が通っており,その向こうにある丘陵地形の左側を(おそらく)通過していきます.
向かって右側が西(低地帯側)なので,この地域の断層帯の一般的な東上がり衝上センスとは逆の西上がりということになります.そういうの back thrust と言うのかな? ちょっと分かりません.
この写真,実は地質研の田近さんの勧めで,日本活断層学会の活断層写真コンテストに応募したものですが...おそらく落選するでしょう.(^^; なんか,ただの畑じゃないの?と言われそうな写真なので.
地形図で泉郷断層を示しておくと,こんな具合になります.リニアメントとしては,すぐ東にある南長沼断層のほうがはっきりしていて長いんですが.地図の南端の断層上に温泉がありますが,これが信田(のぶた)温泉.その北西にあるのがたしか松山温泉です.地物の自称温泉マニアの小山先生によると,これらの温泉は断層に関連したものだということでした.
これらの活断層は『石狩低地帯東縁断層群』と呼ばれるものの一部ですが,これらが大規模に活動すると,千歳・恵庭・札幌・江別・岩見沢という人口密集地に近いため,かなりの被害が予想されます.そういうことが起きないことを祈るばかりです.
2010/11/04 14:04:11