シャープ山の地層





キュリオシティの着陸からもはや1カ月.私が勝手に思っていたよりその進行スピードは遅いのですが,着々と準備をこなしつつあるようです.

左の写真は,キュリオシティが着陸したゲイル・クレータの中央部にあるシャープ山(Mt. Sharp)の麓部の遠望写真です.ほぼ水平な地層が見えています.私の眼には,かなりの粒度差があるように見えます.真ん中上に見えている暗い色の地層は,泥質岩かも? 風成層には,ちょっと見えません.水成層のような?! もちろん,詳細は近づいてみないと分かりませんけど.

で...この写真,実は人類初の写真なんです.何が人類初かと言うと,『山を作っている地層の』なんですね.それがどうした?当たり前だろ,と言われそうですが,そうではないと思います.

オポチュニティが撮影した地層は,いずれも,エンデュランス・ビクトリアというクレータ内部の露出,つまり,『隕石が穿った地表面下位の地層』だったわけです.地球で言えば,変動を受けていない第四紀~現世の地層が地面を掘ったら見えてきた,と.
ところがこのシャープ山の地層は,地表(隕石孔底)から盛り上がった部分に出ているわけです.シャープ山の最大(孔底からの)比高は5500 mだそうですので,これはダイナミックな話だな...と思います.




右の写真は,火星標高データから作成したゲール・クレータとその周辺の地形ですが,これ見る限り,シャープ山は,単なる衝突中央丘には見えません.真ん中にある鋭いピークは中央丘かもしれませんが,シャープ山自体は,クレータ直径(150 km)の 60%程度の直径を持つドーム状地形の北半分が残っているように見えます.中央丘の規模は,隕石孔の規模が大きいほど大きくなるそうですが,これはいったいどうなんだろう?

山を地層が作っているとすると,地球上のアナロジーで単純に考えれば,『テクトニクスが関与している』ということになるわけですが,シャープ山の場合は,そういう所産のようにも見えません.
衝突後の大規模なリバウンドで形成されたと考えても,それを作っているのが地層だということになると矛盾してしまいます.

さてさて,どういうことになるんでしょうか...? キュリオシティは,これからシャープ山に近づいていくわけで,まったく楽しみなわくわくする話です.

2012/09/06 10:21:43


カテゴリー目次へ戻る
トップページへ戻る