長部礫岩





陸前高田市の『高田の松原』のすぐ南に,長部(おさべ)漁港というところがあります.この岸壁の周り一帯に露出しているのが,長部礫岩です.
長部礫岩は,いわゆる薄衣型礫岩の一つで,花崗岩礫を含むのを特徴とし,時代的には中期ペルム紀とされています.この花崗岩礫については,故加納博先生の一連の研究があまりにも有名です.
ご覧の通り(2001年5月撮影)礫岩は熱変成を受け,強い延性変形をこうむっています.薄い緑灰色をした部分は石灰質な部分で,透輝石を生じているためこのような色調になっています.おそらく石灰質泥岩礫が著しく伸長しているものでしょう.花崗岩礫はコンピーテントなため比較的変形が弱く,多少伸長していますが北海道古第三系の歌露礫岩みたいな脆性変形は見られません.温度が比較的高いんでしょうね...




で,この長部礫岩の露頭,火成岩類との複数の貫入関係がよく見られる場所として有名です.右の写真はそれを示したものです.と言っても,説明がないと分かりにくいので...




補助線とキャプションを入れるとこうなります.安山岩脈は,伝統的に『ひん岩脈』と呼ばれているもので,斜長石の斑晶が特徴的なものです.ここではそうでもありませんが,卓状の大型斜長石斑晶を多量に含むものは,通称『銭ポ』(銭型の斜長石を含むポーフィライト)と呼ばれていました.この露頭では,安山岩脈は礫岩の伸張変形構造に沿ってほぼ平行に貫入しています.

で,両者に斜交貫入してくるのが,南部北上の前期白亜紀花崗岩類の一つ,気仙川花崗岩体です.礫岩と安山岩脈に対して当然接触変成を与えています.
私は長部礫岩の伸張変形は,気仙川花崗岩体の貫入による熱上昇が原因と漠然と思っていましたが,安山岩脈には,顕著な変形は少なくとも肉眼的には認められません.別の構造的な要因によるものなんでしょうか...??

ということでこの長部礫岩,火成岩の古生層への貫入関係を示すというもので,大して変わった露頭でもないんですが,巡検なんかには良いかも...と書いて思ったのですが,この場所は,当然2011年の大津波にあっているわけで,この露頭はどうなったんでしょうか...

2014/02/18 13:07:37


コメント:
 嶋岡 (2014/02/27 18:10:50)
  ご無沙汰しております。
「銭ポ」なつかしい言葉ですね。
昔、許さんがよくつかっていた記憶があります。
阿武隈では、マムシを「銭ポ」と呼んでいました。
 私ごとですが、あと1年働く予定ですが、雪が解けたら
仕事の合間に北海道の「地質百選」めぐりをと夢想しています。阿武隈とか北上にも行ってみたいのですが????

コメント:
 mkawa (2014/02/27 19:59:56)
  嶋岡さん,ご無沙汰しています.
『銭ポ』,懐かしいですよね...常駐研究者がいればそういう俗称もいろいろと生まれてくるんでしょうね.
北上は,あの大災害以来,盛岡(早池峰)地域に一度行ったきりで,海岸に近い方にはまだ足を踏み入れていません.まだ気持ちに整理がついていないというか.行ってみたいと思ってはいるのですが...


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