小松峠礫岩





ちょっとご無沙汰の南部北上ネタです.しばらく氷上の話題が続いたので,少し方向転換.

この礫岩サンプルは,私が採取したものではありません.以前穂別町立博物館に勤務されていて現在旭川市在住の地徳力さん(そのスジでは有名人)が,彼の卒業論文のときに採ったものです.北上古生層研究グループ(1982)ではこれを“小松峠礫岩”と呼んでいますが,もしかするとその地名は不正確かも?

正確に言うと,岩手県住田町中埣(なかぞね)から大船渡市石橋に抜ける林道の峠付近で採取したものです.この峠は国土地理院の地形図では『六郎峠』と表記されています.そういう意味では,“六郎峠礫岩”とすべきかも?

礫岩の含有層は,中部デボン系中里層です.礫種としては,中里層や下位の大野層に卓越する珪長質凝灰岩が多く,そのほかに黒色の泥岩礫がかなり含まれています.また,サンプル写真ではちょっと分かりにくいですが,粗粒のカタクラスティックな花崗岩礫も普通に含まれています.




これだけだったら,“まあ普通だろ?”ということにもなるわけですが,顕微鏡で見るとこれがびっくり.黒色の泥含礫は,見事なスレート劈開を生じた変成岩です.
おそらく『南部北上で最古のスレート礫を含む礫岩』なのではないかと.

このスレートの起源についてなんですが...氷上花崗岩ぽい花崗岩礫を伴ってきますので,その接触変成部に由来すると考えるのが一番自然かも.それにしてもこのスレート礫は堆積学的に言うと超未成熟なので,すぐそばにありそうですけどね.氷上花崗岩の周りにはもちろんこんなものは出ていないので...“白亜紀変成を受ける以前の壷の沢片麻岩”だったりして?

あと,北上古生層研究グループ(1982)に書いたとおり,珪長質凝灰岩礫にも顕著な変成片理を生じたものがあるので...先シルル紀のそういうコンプレックスがあったと考えるべきか,あるいはシルル-デボン系に(最近の氷上花崗岩の年代値が示すとおり)花崗岩類の貫入があったと考えるべきか...

あれ? やっぱり氷上花崗岩ネタになっちゃいましたね.

2009/11/24 12:53:19


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