南部北上OQ礫岩-その2
で...話は見え見えですが,その珪岩(quartzite)礫をさらに倍率を大きくして見ると,こういう感じです.
ほぼ等粒状の石英粒子からなり,各粒子は縫合状組織を示しています.その中の微細包有物の並びを見てみると,大上ほか(1984)が示したような dust ring っぽい配列を示しています.しかしこの視野では,それ以上のことは分かりません.そこで,礫の他のところをもう少し注意深く探してみると,こんな決定的な構造が.
まさに完璧な,円磨した石英砂粒子外形を示す dust ring でした.特に中央右側にある粒子は,石英砂粒子の外側に overgrowth した石英の領域がはっきりと見えています.まさに典型的なOQ(正珪岩)です.
おそらく,南部北上古生層中の礫で唯一の『完璧なOQ礫』であると自負できるものです.いや~...感動しましたね.
ただし,南部北上のシルル系中にOQ礫岩が含まれるテクトニックな意義を論ずるには,これだけではちょっと(かなり?)材料不足です.実はこのOQ礫岩を単独の論文にできなかったのは,自分的にはそれが理由でした.
North and/or? South China地塊の大陸性砕屑岩の分布を供給源としているのは,まあ自明だと思うのですが,このOQ礫自体かなり円磨度が高いので,再食礫の可能性もあります.そうなると,ちょっと追跡不能...南部北上近傍には,そういう先シルル紀砕屑岩は当然露出がないし,カンブリア紀まで時代がさかのぼった日立帯にも(おそらく)ないだろう...となると,back-arc opening (か大陸縁辺rift?!)かなんかで遠ざけるしかないような気がしますが,いずれにせよ材料不足です.うーむ...
ちなみに,この狼久保OQ礫岩中には,この顕微鏡写真のような『片状石英岩』あるいは『白雲母-石英片状岩』が普遍的に含まれます.マイロナイト起源かとも思われるのですが,詳しい岩石学検討はできていません.こういった変形・変成礫の存在が,テクトニクスを議論する際のキーになるのかも?とも思われるのですが,それ以上は何とも議論が不可能で今に至っています.
2014/03/10 12:59:42