氷上花崗岩の『脈』





氷上花崗岩の話題はそろそろ終わりにしたいので,書いてしまいます.

村田ほか(1974)から出てきた“氷上花崗岩先シルル紀説”がその後の私(たち)の研究で追認されほぼ定説となってしまいましたが,氷上花崗岩が古生層中に貫入するという見解は野沢ほか(1975)いらい,いくつかあります.私自身は,それらの見解を否定するつもりはありません.“怪しい”現象は自分自身何度も目にしているもので.

上に上げた写真は,大船渡市樋口沢の“天然記念物:ゴトランド紀化石産地”のすぐ上流の沢の中に見られる露頭です.水中露頭をスローシャッターで撮ったものなので,ちょっとに見くいですがご勘弁.
写真上半部の薄青いのはデボン系大野層の珪長質凝灰岩層で,下半部が氷上花崗岩.全体としては厚さ数十cmのシート状の岩体を作っています.この写真にも写っていますが,花崗岩の結晶粒子が凝灰岩の中に“脆性的に”入り込んでいるのが特徴です.私たちはこれを『バラケ』と呼んでいます.こういった産状は許(1976)でも明確に記載されています.




このサンプルは,下の書き込みでも紹介した住田町白石峠岩体の氷上花崗岩とその構造的下位の“デボン系珪質泥岩”との関係です.氷上花崗岩が,厚さ数cmの脈状(・破砕)岩体として堆積岩中に入り込んでいます.

さてさて...こういう産状をどう考えればよいのか,他の先人たちが頭を悩ませたように,私も考えるとアタマが痛くなってしまいます.おそらく...ポイントになるのは,花崗岩が『固結岩の破砕剪断現象』で入ったか,それとも『半固結状のマグマ』として入ったか,なのではないかと思いますが...いずれにせよどちらであるかを指し示す明確な証拠・現象はないと思われます.

判断・評価の難しい CHIME 年代は別としても,今年の岡山学会で発表された氷上花崗岩のジルコンU-Pb年代(下條ほか,2009)には明らかにデボン紀の年代が混在しているそうで...許(1976)も指摘している“複合・再動説”がまたもや頭をもたげてくるんでしょうか...?

2009/11/09 10:52:29


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