気仙川ゼノリス





今は失われてしまった露頭シリーズ...になるのかな?

これはかつて,岩手県住田町高瀬の気仙川の中にあった露頭です.川村ほか(1980:短報)で報告したものですが,要するに中生代のランプロファイア質貫入岩中に大量のゼノリスを含むものです.武田(1960)で簡単に報告されていますが,“同源捕獲岩”としたため,その特異性はあまり注目されませんでした.周囲の古生層との関係は露頭が離れており不明ですが,近傍には下部石炭系大平層が分布しています.

たしかに,角閃石ハンレイ岩や輝岩などの“同源”としても矛盾はないようなものも含まれてはいますが,そのほかに,ザクロ石角閃岩・アクチノ閃石片岩・変質蛇紋岩など,南部北上帯の古生層基盤の構成を考える際の手がかりになるような岩種が多数含まれています.




これは典型的な角閃岩ゼノリスですが,これに含まれるザクロ石の組成を見ると,典型的な角閃岩相の変成岩と考えられます.

この露頭は,10年ほど前に確認に行ったことがあるのですが,橋の付け替えと護岸改修とで,その基部らしきものは川の中にまだあったような記憶がありますが,ほとんど失われていました.残念です.
ただし,これほどの立派なゼノリスは見つけていませんが,合地沢や小坪沢などで見られる小貫入岩脈の中には,苦鉄質岩ゼノリスをかなり大量に含むものが珍しくありません.

注目すべきなのは,ゼノリスの中に『氷上花崗岩』の類の珪長質深成岩がまったく見られないことです.もちろんゼノリスの捕獲深度が限定されていた,という可能性もあるわけですが...私としては,南部北上古生層の下は苦鉄質・超苦鉄質コンプレックスを主体とすることを示すもの,と考えています.
このことは,このあと,早池峰帯の研究で段々と理解されていきます.それは別カテゴリで,いずれ.

2009/09/25 15:03:44


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