南部北上OQ礫岩-その1





オルソコーツァイト(OQ)というのは,要するに石英砂岩のことですが,島弧環境の日本列島では,常に『大陸性の異地性要素』として扱われる岩石です.日本列島の近傍では,中朝地塊の上部原生界~下部古生界中に大陸性~プラットフォーム性堆積物としてかなりの量存在しています.
要するに(まれな例外を除いて)島弧である日本列島の地層の中にはまずないもの,と言えます.ただし,いくつかの地質体から,礫岩中のOQ礫としてその産出が報告されています.

南部北上帯の古生層としては,大上ほか(1984)によって,南部北上帯北縁部のシルル系の礫岩から破片状の砕屑物として初めて発見されました(下注).
私たちは『北上古生層研究グループ』として1983年からこの地域の古生層を研究してきたわけですが,その過程で,『実に見事な』OQ礫を発見しています.今回はそのお話です.

注)Okami et al. (1973)で,長坂地域の下部石炭系唐梅館層からOQ礫が1個だけ報告されているが,写真図版が不鮮明.

上の露頭写真は,大迫町狼久保付近の岳川沿いのもので,地層は,この地域の古生層の最下部を構成する名目入沢層の砂岩泥岩互層で,その中に厚さ数m以下のレンズ状に細礫岩層が挟まれています.もともとは,共同調査中にこのルートを担当した中井均さんによって 1983年秋に見出されたものと記憶しています.




で,その礫岩のサンプルを切断研磨してみると,(多少ホルンフェルス化していますが)色の明るい石英質の礫が多量に含まれているのが分かります.真ん中下にあるやつなんかは,なにやら等粒状の複結晶石英からなる珪岩(石英岩)で,いかにも怪しそうな顔つきをしています.
そのほかに含まれるのは,砂岩・泥岩・珪長質火山岩・チャート?などです.全体に成熟度が非常に高く,上位の折壁峠層に特徴的な含花崗岩礫岩とは様相を異にしています.




この礫岩中の珪岩礫を薄片にして観察してみると,こんな具合で,見事な等粒状石英粒子からなり,いかにもアレっぽいです.私は最初これを偏光顕微鏡で見たときは,うわぁっと声を出してしまいました.いったいこれは...?!って,もう話は分かりきっているわけですけどw.

(以下続く)

2014/03/07 14:01:19


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