南部北上OQ礫岩-おまけ





このシルル系OQ礫岩は,そのテクトニックな意義がはっきりしない,というネガティブなことを書きましたが...実はそれ以外に,ローカルな意味で,ある重要な意義を持っているんでした.忘れてたというか.

上の図を見て欲しいのですが,実はこのOQ礫岩を含む南部北上帯北縁部の最下部層であるシルル系名目入沢層は,その下限というか,『いったいなんの上に堆積したものか』がはっきりとしていません.構造的下位には,島弧性火成岩コンプレックスである神楽火成岩類(猫底岩体)が存在していますが,両者の間ははっきりした断層関係で,名目入沢層の最下部は欠如しています.これだと,南部北上帯古生層全体のテクトニックな意義も分からないままです.

ところが...天は見捨てなかったと言うべきか.

大迫地域の東側に,川井地域があります.両者の間には白亜紀花崗岩体の分布の張り出しがあり,川井地域の古生層は化石未産出で,また分布も連続していないので,古生層の相互関係もある意味不明なままでした.

しかし我々は,川井地域からも同じ礫種構成のOQ礫岩を発見しています.層準は,薬師川層の下部層と上部層の境界付近です.ん? なんで層準の表現が曖昧なんだ?...実はこのOQ礫岩,転石群なんでした.ただ,小さな沢の中やその斜面の密集転石なので,その層準は,かなりの程度絞ることができたというわけです.その層準には,狼久保OQ礫岩の産状と似通った異常堆積?礫岩レンズの露頭も観察されており,両者はほぼ対比可能です.

ということで結論として,大迫地域のシルル系名目入沢層(の下部付近)と川井地域の古生層最下部の薬師川層とが,相互に対比できるということに(図参照).

重要なのは,この薬師川層,大迫地域と同じ神楽火成岩類(神楽岩体)の上に整合関係で重なっている地層であるということです.
神楽火成岩類というのは,ソレアイト質の苦鉄質火成岩(ハンレイ岩・玄武岩)を主体として,珪長質火成岩を伴うコンプレックスで時代はオルドビス紀です.
そのテクトニックな性格は,まだ不明な点がありますが,岩相の組み合わせからは,島弧性のものである可能性が大です.私は,海洋性島弧なのではないかと予想しているのですが...となると,南部北上帯はオルドビス紀の海洋性島弧の上に形成されたものということになるわけですが,残念ながらその先は,まだ議論の材料に乏しく闇の中です.

2014/03/10 13:25:44


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