双子のMSラミナイト








で,このMS互層の薄層バリエーションであるMSラミナイトですが...まったく同じものが,北上山地周りで他にもあることに我々KPGは気づきました.

この写真は,左が根田茂コンプレックスMSラミナイトの模式地,盛岡市砂子沢上流のもの,右が『母体-松ヶ平帯』一関市(旧大東町)伊沢田川の『母体層群』のもので,永田秀尚さんの採集によるものです.永田・KPG(1997)で紹介されています.

母体層群のほうは多少風化して褐色がかっていますが,MSラミナイト部,その褶曲・破断,石英脈のプールなど,まったく瓜二つの岩石であることは間違いありません.

以前,某巡検でこの瓜二つのMSラミナイトを紹介したところ,ある参加者から『そっくりなことは分かったが同一のものという証拠はどこにあるのか?』と言われました.まったくそのとおりで,岩相以外の証拠はありません.
しかしそれはある意味で,『悪しき実証主義』かと感じます.二つの石英長石質砂岩サンプルをだして,ほら同じでしょ?なんて言ったらそれは,『証拠どこにあんの?』といわれるでしょう.しかしこのMSラミナイトの場合,他にない『独特な岩相』なわけで,いくらでも他にあるものから恣意的に二つ選んだわけではないんですよね...まあそういう議論はここまでにしておきます.




北上山地周りのテクトニック模式図は,少なくとも私たちはこう考えています.根田茂帯の西側はNNW性の左横ずれ断層によって大きく(少なくとも10kmオーダーで)転位しています.超苦鉄質岩類の分布もそれによって規制されています.ここから出てくる結論はただ一つ,『根田茂コンプレックス=母体層群(=古生代付加体)』ということです.

こう言うと『でも,母体層群って上部デボン系に不整合に覆われているんだよね?』という反論が当然出てきます.これについては,まず一つには,佐々木ほか(1997),Sasaki (2001)で明確にされたように,上部デボン系に不整合に覆われるのは,母体層群ではなく,南部北上帯の最下部構造である超苦鉄質岩+火成岩コンプレックスである,とだけ書いておきます.これは少なくとも南部北上山地の古生代テクトニクスを考える上で非常に重要なポイントです.

もう一つ重要なポイント,つまり『松ヶ平では?』があるのですが,それについては長くなるので別アーティクルで.

2009/12/17 11:24:33


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