北上古生層最下部緑色岩





いろいろ忙しかったとはいえ,ブログの更新を2週間もサボってしまいました.反省.

この話題は,本来は南部北上帯の話なんですが,伝統的な南部北上の像とは大きくかけ離れたものです.このことは,我々も,早池峰地域をやるまではちゃんと認識していませんでした.

何のことかというと...南部北上北縁部(大迫・川井地域)の古生層の下に分布する緑色岩類です.上のコンパイル図で深い緑色で示した部分がそうですが,地質図みるとお分かりのように,この緑色岩,早池峰山の北麓地域まで回り込んだ分布を示すので,その多くが北部北上ジュラ紀付加体中の緑色岩と誤認されていたと思います.



これは,早池峰山北川の御山川上流部握り沢の緑色岩ですが,見事な枕状構造を示しており,ちょっと見には南部北上に関係のある岩相とは思えません.

しかし,大沢(1983)で報告されたように,タイマグラ林道で,南部北上古生層の最下部,薬師川層の砂岩泥岩と整合関係で接するところがあり,南部北上のエレメントであることが明らかです.
私はこの緑色岩をなんと呼ぶかかなり迷ったので,『infra-Silurian Greenstone』と呼んでいたことがあります.当たらずといえども遠からずの名前でしたが.

かなり昔の話ですが,早池峰山周辺の角閃岩の全岩化学組成をコンパイルしていたとき,どうもそれが『島弧的』であることに気づきました.Ti がそれほど濃集しない,島弧ソレイアイト的な感じに見えたんですね.もちろん既存データの数がほとんどないので,それ以上は言えませんでした.その後,東北大岩鉱の吉田武義さんが分析されて同じような結論に達しているのをみて,ああやっぱりな,と思ったものです.分析用サンプルは採取していたのですが,ちょっとサボっていて,分析はやっていませんでした.

その後そのサンプルを含めて,内野さんがM論で微量元素まで分析し,明瞭な島弧シグネチャがあることを明らかにしています.この分析値は...まだ公表していないんだったかな?




この緑色岩,周りに粗粒な陸源性砕屑物をほとんど伴わないので,なんだか『海の匂い』もしてきます.未公表データですが,川井地域の柱状図を見てみるとこんな感じ.
ここで『小黒苦鉄質岩類』と書いているのがそうですが...ハンレイ岩・ドレライトという粗粒相を伴うのは当然として,石英閃緑岩~トーナル岩を頻繁に産するのが特徴的です.これについては,次アーティクルで.

2010/02/17 13:30:55


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