根田茂コンプレックスMS互層
そろそろ,1983年以来の北上古生層研究グループの大テーマである,早池峰テクトニクスのカテゴリーに書き込みを増やしていこうと思います.とは言っても,この数年は自分ではほとんど体使った仕事をしていません.そういう意味でちょっとツライのですが,産総研の内野さんの仕事の紹介も交えながら,書いて行こうと考えています.
まずは,根田茂帯(ほんとは『早池峰帯』と書きたいのですが ^^;)の構成地質体である根田茂コンプレックスの特徴岩相:『MS互層』について.
ちなみに,この『根田茂帯の根田茂コンプレックス』という表現について,某投稿論文の某査読者から『白い白馬みたいな稚拙な表現』と言われてしまいました.(^^; そんなこと言われても,私たちが付けた名前ではないので...本心は上に書いたように『早池峰帯根田茂コンプレックス』と呼びたいのですが.諸般の事情でこうなってしまったと.
で,その根田茂コンプレックスの特徴岩相ですが,こんなやつです.露頭位置は盛岡市根田茂川下流部です.『MS互層』というのは Muddy and Siliceous Alternation の略訳ですが,当初はMSラミナイトと呼んでいました.なにしろ緩急当初はこんなサンプル(盛岡市砂子沢上流部)が模式標本だったので.
変形は複雑で,上の写真のように基本的には破断互層であり,根無し褶曲とか非調和褶曲,はては transpose 構造までオンパレード.変形の素人である私たちには,せいぜいユニークな名前を付けてやることくらいしか出来ませんでした.
根田茂コンプレックスの検討が内野さんのM論で一歩進むと,この岩相の層状構造が必ずしもラミナオーダーだけではなく,もっと厚いものも普通にあるということが分かってきたので,MS互層と呼ぶようになったわけです.
もっとも特徴的なのは,根田茂コンプレックスから緑色岩類を差し引くと,あと残りほとんどがこのMS互層になってしまうということです.通常の付加体層序みたいに,陸源性タービダイト互層に移行する...などということが全然ない.これはおそらく根田茂コンプレックスという古生代付加体を考える際の重要なポイントだろうと思います.
2009/12/16 14:34:04