早池峰スラスト





下のコンパイル図を見て欲しいのですが,早池峰山を構成する巨大な蛇紋岩体(中岳蛇紋岩体)の南側の境界は,何本かにスライスされてはいますが,基本的に緩く北に傾斜する低角断層境界と表現されています(左図).

これ(早池峰衝上断層)はもともと,東北大の永広さんたちが提唱したものですが(永広ほか,1986),我々も確認してみようと,南麓の奥鳥沢に行ってみました.1987年10月のことだったと思います.



まずは,沢の源頭付近の蛇紋岩の大岩壁に驚きました.これで大体標高が1300m付近だと思います.岸壁に立っているのは,信州大学の吉田孝紀さんです.
私の眼には,こころなしか,低角の層状構造が見えます.岩体内の剪断構造なのか?それともマントルのオリジナルな層状構造が見えているのか...?




この大蛇紋岩体の底部を見ると,こうなっています.写真の真ん中に右上から左下に走る剪断すべり面が見えますが,この上が蛇紋岩,下が南部北上古生層の泥岩です.写真の右側が南なので,境界断層は緩く北へ傾斜していることが明瞭です.

ただ,肝心の提唱者永広さんはその後,これをスラストと呼ぶ・評価することはなく,“根無し?の蛇紋岩ダイアピルの笠状部の下底”を見ていると解釈しているようです.

たしかにそうなのかもしれませんが...同じような蛇紋岩がらみの低角断層が宮守地域にも見られることを考えると,ナップの一部が後期の断層で転移して分かりにくくなっているだけ,という可能性も捨てがたいと思っています.




ちなみにこの写真は,奥鳥沢の一つ西側の大作沢最上流部(というかほとんど壁でしたが)の角閃岩体(地質図で藍色の部分)とその上位に低角断層で接する蛇紋岩です.これも断層面は緩い北落ちでした.

全然関係ないんですが,この大作沢はひとりで登ってます.この露頭は,標高1200m付近だったと思いますが,ほとんど稜線の壁が始まる直下のところです.1987年というと,私が34才のときですか...いろんな意味で地質屋としてのピーク(あまり高くなかったけど)を迎えていたときのことですね.うーむ...懐かしいというか,感慨深い.

2009/11/12 12:19:59


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