ルーラン岩礁
またもや『地質漫遊記』(=専門に直接関係ない)シリーズです.
えりも町ルーラン岩礁.これも40年前の学生巡見で見たもの.地名的にはルーラン岩礁というよりは『千平(ちひら)岩礁』と呼ぶ方が適当なので,最近はそう呼ぶ方も多いようです.でも私的にはやっぱりルーラン岩礁と呼びたいな...なにしろ北海道らしいエキゾチックなので.
で,ルーラン岩礁に露出しているものは,この黒雲母片麻岩とそれを貫く不均質トーナライト(だったと思う)です.日高変成・深成岩コンプレックスが海岸に露出している露頭として,貴重なものだと思います.露頭が赤焼けしているのが残念ですが.
ちなみに,この場所のすぐ南で日高変成・深成岩コンプレックスは東西性の断層で切断されて,襟裳岬側には露出していません.
40年前はこういう不均質岩相をミグマタイトと教えてくれました.今はどう呼ばれているんでしょうか? やっぱりミグマタイトのような気がしますが.
これが,あまり赤焼けしていない不均質トーナライト.黒雲母の濃集クロットが散在しており,なんとなくミグマタイトの幽霊みたいな.
このトーナライトは巨大転石として海岸に散在しているので,そちらを見た方がいろいろなものを見ることができます.
これはその転石の中にあった黒雲母片麻岩の包有物です.アメーバ状の形態をしており,素人目にはいかにも部分溶融の残り物みたいに見えます.
包有物の上左に見える白い結晶は,おそらく珪線石だと思いますが,自信ありません.
まあ要するに成因論的には,このトーナライトが外から入ってきたマグマなのか,それとも片麻岩自身の溶融物と考えるかが,分かれ道なんでしょうね.
40年前は後者だと教えられたわけですが,現在の同位体岩石学などの結果はどういうことになっているんでしょうか?
蛇足ですが,この露頭は以前,教養課程1年生の巡検ポイントでした.地学をほとんど履修していない彼らには,『下部地殻の変成岩と珪長質マグマ』という説明に,ほとんど具体的なイメージが持てないようで,説明する方もかなり苦労していました.無理ないですよね...
2011/11/10 10:29:07