北海道一の枕状溶岩





枕状溶岩の話が出たついでに...これは,平取町から日高町にかけての沙流川河岸に露出する枕状溶岩です.地質ユニットとしては,沙流川層と呼ばれる緑色岩卓越の付加体で,ニセウ層との相互関係が不明な部分もありますが,全体として前期始新世の付加体とされています.
この年代は,周囲の神居古潭体の白亜紀付加体の年代とはかけ離れており,岩相も含めて,『出所・所属不明』といったところです.
この写真は有名な岩知志発電所わきの露頭ですが,結構アプローチが危険なところにあり,最近は巡検ポイントから外されることが多くなっています.




で,この沙流川層の枕状溶岩,おそらく『先新第三系の枕状溶岩』としては,おそらくその保存状態など,北海道で一番のものではないかと思われます.付加体とは言え,やっぱり中生代のものではないからなんでしょうか...?

上の写真には,見事な垂れ下がり構造や,放射状の節理・同心円状構造などがよく見えています.
右の写真には,枕の断面ではなく表面が良く見えています.昔のリバーサルフィルムで撮った写真をスキャンしたものなので,イマイチ不鮮明ですが,ハンマーの右上の枕の内部には,ミニ溶岩トンネルが見られ,その内部は炭酸塩鉱物で充填されています.トンネルの平たんな床も見られ,geopetalとして,この溶岩体の上方が層位学的上位であることを示しています.




左の写真は,枕状溶岩の流走面を上から見たもので,こういうビューが得られることはちょっと他のところにはないと思います.これは亀の子状溶岩というか,写真の向こう側がやや扁平化したピロー・ローブで,その先端が破けて手前側に新たなローブが射出したことが分かります.
こういった流走時のオリジナルな構造がそのまま保存されているのは,付加体緑色岩としては非常に珍しく,貴重なものです.

この露頭,最近行ってないけど,どうなってるんでしょうね?

2011/11/09 13:08:14


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