サンゴの沢不整合
はっと気づくと,もう9月...おまけに8月のブログ更新は実質的に1回だけ,と土下座ものの状態です.いかんいかん...ネタは腐るほどあるのにな.
ということで,3年目の地質実習に使っている日高町サンゴの沢の新第三系基底不整合の話をまだブログに書いてなかったことに気づき,ちょっと泥縄ですが,それについて書いてみます.
上の写真は,日高青少年自然の家からサンゴの沢林道に入って300mほどのところにある『涙の滝』.誰が名づけたのか知りませんが,ちょぼちょぼとした水量の少なさがなるほどと思わせます.ちなみにこの場所,沢の出会いのはずですが,地形図で見ると,ほとんど沢型はありません.上(スキー場)の方に行くとちょっとばかし沢型がはっきりしてきますが.
この涙の滝を造っているのは,新第三系ニニウ層群下部層の礫岩砂岩互層です.なんで層群のメンバーなのに『下部層』なのか...どうも大元の地層区分に不適切さがある(=実態が層群ではない?)ようなのですが,それは置いときましょう.
涙の滝の上流側には,右の写真のように,蝦夷層群の凝灰質砂岩と泥岩の互層が分布しています.こういう角度で見ると分かりますが,ニニウ層群の傾斜は30度前後,蝦夷層群は60度前後と,かなりの傾斜差があります.当然両者の間には不整合があるわけですが,図幅でも各種論文でもその記載はされていません.なんでかというと,おそらく『不整合露頭がなかったから』?!
というのは,この周辺は2003年夏の集中豪雨で大きな災害にあっています.サンゴの沢でも夜半に土石流が発生し,その一部が溢流して青少年自然の家に流入し,宿泊客(300人以上)が懐中電灯の明かりを頼りに歩いて避難する,ということまで起きています.
その際,涙の滝周辺を含むサンゴの沢下流域は侵食域になっており,河床や河岸に新たな露頭がたくさん生じました.そのおかげというか...(以下続く)
PS.ちなみにこのニニウ層群下部層の基底礫岩ですが,ご覧のように淘汰の悪いもので,おそらく土石流堆積物です.左下の周辺が赤褐色の玉ねぎ状に風化しているのは蛇紋岩礫です.
2010/09/07 14:55:20