夕張石炭の大露頭
夕張の地質遺産の話を書いていたら,なんとこの大露頭をまだこのブログで紹介していなかったことに気づきました.おそらくそうだと思いますが...ダブっていましたらご容赦.
夕張石炭の歴史村の中にある,北海道指定天然記念物『24尺大露頭炭』です.なにしろ日本の地質百選にも選ばれているところですから,紹介しないわけにはいかない.
24尺層というのは,写真見てお分かりのように,上から6尺層,8尺層,10尺層という厚さの炭層が積み重なっているからで,その合計が24尺,つまり 7.2 m というわけです.
この露頭は,1888年に B.S.Lyman の日本人弟子,坂市太郎によって発見されたものだと言われています.
各炭層の間には,薄い凝灰質泥岩を挟んでいます.6尺層の上には少し厚い泥岩層が,見えています.露頭は,透明な塗料のようなもので保護されていますが,行くたびに剥がれ落ちている部分もあり,けっこうはらはらさせます.
この露頭の右下に,石炭博物館の坑内ツァーの出口があります.
私は,学生巡検などで行ったときには,こんな説明をしています.
『厚さ1 mの炭層が出来るためには,植物遺体が17~20 mもの厚さで堆積する必要がある,という計算もされています.この計算からすると,合計24尺(7.2 m)のこの露頭に見られる石炭層の原料になった植物遺体の厚さは,122~140 mということになります.莫大な量の植物が堆積したことがわかると思います』
この話,ちょっと元ネタが分からないのですが,信州大の保柳康一さんあたりだったかもしれません.もちろんこの『莫大な量の植物』の要因としては,始新世当時の超温暖な気候ということもあったと思います.またもちろんこの時代には日本海が無かったわけですから,この場所も大陸河川の河口付近ということにもなるのかも.ちなみに,露頭の看板の左に見えている木は,メタセコイアです.なかなか演出がうまいです.
この大露頭(夕張層)は完全に水平というわけではなくゆるくうねりながら左側に傾いており,右側(下流側)にいくと,夕張層の下位層の幌加別層の泥岩が出てきます.おそらく siderite 質と思われるコンクリーションやノジュールを含んでおり,還元性環境での沼沢性堆積物と考えられます.写真の滝(のようなもの)の下部の大きな転石の右に見えている風化してオレンジ色になっている球体が siderite ノジュールです.
石炭の歴史村が繁盛していたときは,入り口で入場料を払わないと入れなかったのですが,いまは完全なフリーパスになっていますので,見学は簡単になりました.それにしても,石炭博物館や化石館がどうなってしまうのか,地質屋としてはかなり心配です.
2010/03/24 13:34:26