日高発電所の珪長質凝灰岩
日高町サンゴの沢のすぐ北の沙流川沿いに,日高発電所があります.ご覧のような小さな水力発電所ですが,その対岸には,いかにも硬そうな立派な岩石の露頭が.周りはかなり軟質な蝦夷層群の黒色泥岩(アンモナイトが出るらしい)なので,この部分だけがゴルジュのようになっています.
発電所側からはとても露頭には取り付けないので,対岸から遠望するだけですが,灰緑色の硬質な珪長質凝灰岩です.ちなみに手前側にも露頭があるのですが,この時は柵が立っていて近寄れませんでした.なお,対岸は畑になっているので,そちらからアプローチできるかもしれません(行ってない).
珪長質凝灰岩は最大単層厚 3 m はある厚層なもので,以前手前側の露頭で見たときは,かなり粗粒な凝灰岩でした.層理面は急傾斜西落ちで,左(下流)側が上位です.なお『日高図幅』ではこの凝灰岩,上流側に傾斜していると図示されていますが,ミスでしょうね.
このような蝦夷層群中の粗粒凝灰岩は,中部層準の下部(この表現なんとかならんもんか)付近にあちこちで見られます.この写真は同じ日高町の滝の沢中流部に見られる同層準の珪長質粗粒凝灰岩の下底部です.下位の成層シルト岩の層理を一部で浸食する関係で接しており,内部は不淘汰・未分化なので,私は水中火砕流堆積物と考えています.いずれにせよ,降下火山灰堆積物あるいは薄層・葉理堆積物と一般に思われている蝦夷層群の凝灰岩のイメージとは一味もふた味も異なっています.
もっと大胆に考えると,この凝灰岩をもたらした火山活動は,良く言われる『西方大陸上』なんてもんじゃなく,蝦夷層群の intrabasinalなものだと...神居古潭帯中に良く見られる100 Ma前後の島弧性トロニエマイトとの関係が想起されます.
あとほんとに蛇足ですが...国土地理院の地図には,サンゴの沢入口から日高発電所に至る道の脇に温泉マークが描かれているんですよね...あれ,なんなんだろう? 冷泉なのかな?
2015/03/03 15:11:05