蝦夷層群下部層準タービダイト
そろそろ私の本業(?)である地層に戻りましょう.
このカテゴリーのアーティクルをお読みになると,私が蝦夷層群の松本流の3(or 4)区分に疑問を持っていることがお分かりになると思います.これは,もともとは東北大学の高嶋さんや茨城大学の安藤さんから伝染してきた考え方ですが,『気を確かに持って冷静に』考えれば,どうやってもそういう結論にたどり着くと思います.
て...前置きが長すぎ&抽象的ですね.(^^; 上の写真は,日高町沙流川沿いの岩石橋たもとの蝦夷層群下部層準の厚層タービダイトです.いわゆる『下部蝦夷の富問砂岩型』というやつですが,層厚は全然たいしたことがなく,おそらくこの界隈では数十m以下だと思われます.
この層準の下位には,層平行な剪断帯があるのですが,タービダイト互層の中には,かろうじて外部堆積構造が残存しています.右はその一つで,おそらくフルートマークの癒合・変形したものだと思います.
これら2枚の写真は,Exif 情報が消えてますが,2000年6月に撮ったもので,キャノンの200万画素コンデジで撮ったものです.拡大して見ると,その画質には(ネガティブな意味で)驚かされます.
で...今年の夏,この露頭を撮り直そうと行ってみたのですが,残念ながら露頭への泥の付着が激しくて,全然でした.それで周りを見渡してみると,川の対岸の上流側になにやら露頭があるのを発見.走向から見るとこのタービダイト層の延長っぽいので,さっそく橋を渡って行ってみました.露頭に取り付くには,少しばかしヤブをこがなくてはいけませんでしたが,ビンゴでした.
ちょっと風化が進んでいますが,まあまあの露頭です.これは,グルーブキャストでしょう.なかなかリアルに残っています.富問砂岩の模式地である富良野市奈江川でも,こういったソールマークは観察できるのですが,なにしろ露頭が苔に覆われしかも暗い...
こちらは,曲がりくねった層平行の生痕とフルートキャスト+ロードキャストの複合・変形したもの,でしょう,おそらく.
蝦夷層群の下部層準(いわゆる下部蝦夷層群 ^^;)のタービダイト砂岩は,『富問型で石英質』と思い込んでいる方もいますが,現実は複雑です.分析してみると,ぜんぜん石英リッチじゃなかったりします.私は,おそらくいろいろなタービダイトをごっちゃにしているんだろうと思っています.
そのへんを解決するには,各分布地域でちゃんとした累層・部層区分をしなくてはいけないわけですが,特に蝦夷層群分布東半部では,まったく行われていないのが実情です.
最近やっと出た朝倉書店日本地方地質誌『北海道地方』では,その事情をあからさまにするために,日高町-占冠村界隈の蝦夷層群を,(上部・函淵除いて)すべて双殊別川層に一括してしまいました.はっきり言って乱暴な措置ですが,『さあ,ちゃんと区分してみろ・みよう』という挑発行為だと思っていただければ.
こんなこと書いたら,私の地質屋生命も終わりかな...:-p
2010/12/10 11:19:53