蝦夷層群基底不整合-三石編
おそらくこれが今年の最後のブログ更新になると思いますが...予告編みたいなもので,これからちょっといくつか書こうと思っている『蝦夷層群(中部層準)基底不整合』について,先鞭を付けておきます.
これは,新ひだか町(旧三石町)三石川中流部支流で確認される蝦夷層群中部層準基底の河川成層です.いま弘前大学にいる植田勇人さんが私の研究室でD論を研究しているときに発見したものです.この facies が白亜紀『付加体』(と蝦夷層群下部層準)を不整合に覆っているわけです.
この露頭と周辺の地質は Ueda, Kawamura and Yoshida (2002) に報告しましたが,けっこう査読で苦闘しました.この河川成層も,『重力流堆積物の traction carpet ではないのか?』とか...いやそれは随伴相がそうではないので.(^^;
上の露頭のすぐ上の層準だと思いますが,吉田孝紀さんが発見した植物根跡です.私なんかは素直に,立派なルートレットだなぁと思ったのですが,これも査読者から,かなりのご指摘を受けました.植物根である『証拠』を見せよ,と...横断面まで切って,薄片で見たりしたのですが,植物組織は残念ながら残っていませんでした.分岐構造を持つ部分はあったのですが,『ひげ』までは見つからず.
ちなみに左は,釧路炭田地域の(古)第三系挟炭層(雄別層?だったか)中に見られる典型的なルートレットです.私の眼にはどう見ても同じものにしか見えないのですが...科学的厳密性を求める査読者には,厳しく勉強させていただきました.m(__)m
で,この『蝦夷層群中部基底不整合』については,他地域の例など,いろいろと書き込んでいこうと考えています.なにしろ査読者もにわかに信じなかったほど『常識はずれ』のことなので.
もちろん,不整合そのものは1960年代からその存在が分かっていたわけですが,問題はそのテクトニックな性格です.これは思い出話になりますが,故渡辺暉夫教授にこの不整合の話をしたとき,『とても信じがたい話だが,もし本当ならばそれは大変なことだ..』と言っていただいたのがすごく貴重な思い出です.
しかし研究そのものは,その後全然順調には進まなかった(=進んでいない)のが慙愧の至りなんですけど.
2009/12/25 12:03:22