『下部蝦夷層群』の虚実
これは簡単に書くのが非常に難しい話で...とりあえず話を始めてみます.
蝦夷層群が下部・中部・上部とに区分にされるというのは,昔から有名な話で,一般に広く理解されています.特に,北海道の地質屋には広く受け入れられていますが,しかしその実情はというと,なかなか胡散臭いところがあるな...と私は感じています.お叱り覚悟ですが.
上に上げたのは,日高町某所の“下部蝦夷層群”中に見られる(おそらく)ストーム礫岩です.貝殻片(トリゴニア?)を多量に含んでいて,私が昔方々で教えられた下部蝦夷層群の一般的イメージとは非常に違っています.2003年の集中豪雨で沖積が取り去られて見えてきた露頭ですが,その後また埋没してしまっています.
このストーム礫岩周辺層準は,葉理シルト岩と細粒砂岩の互層ですが,シルト岩には著しい生物擾乱が観察され,おそらく浅海相だろうと予想されます.
『それは要するに中部蝦夷なのでは?』という捉え方もあり得ますが,少なくともこの地域の“下部蝦夷層群”からそういう部分を取り去っていくと,薄いタービダイト層が残るだけで,ほとんど層序単位としての実体が残りません.ましてや下部蝦夷“層群”なんてとても無理な話です.
この辺をちゃんと整理して前弧海盆テクトニクス(それが私の主眼なので)の実態を探っていきたいな...なんて思うことは思うのですが,戦力が...(涙)
2009/04/01 13:49:15