ペンケベツ橋たもと





これは,実に懐かしい露頭です...写真そのものは2003年8月に撮影したものですが,話は1991年にさかのぼります.
場所は,新ひだか町(旧静内町)高見ダム湖畔のペンケベツ橋のたもとです.

私は1986年に北大地鉱教室に助手として採用され,しばらくは北上山地の北方延長ということで渡島帯ジュラ紀付加体をやっていましたが,北海道に職を得たのだから,やっぱり北海道そのもののフィールドをやってみたいと思うようになり,1991年4月に,北海道中軸部の地質をとりあえず一人巡検に出かけました.

日高累層群からとりあえず見たのですが,いまひとつぴんと来るものがなく,その後静内川の奥に入ってみました.そのとき見たのがこの露頭です.当時は林道を開削したばっかしでもっとモロ見えだったんですが...地層はいわゆる“中部蝦夷層群”ですけど,印象に残ったのはその変形具合でした.どうでしょう?この写真にそれが見えているかどうか...

当時の私は門外漢として,蝦夷層群というのはアンモナイトなんかを含む砂泥互層で...というくらいのイメージしかなく,それらが主に層平行のさまざまな剪断変形を受けているなんて思いも寄りませんでした.ぶったまげたのを覚えています.それが私の蝦夷層群に関する検討のきっかけとなりましたが...その道は茨の道でした.要するにそういう変形構造を扱えるフィロソフィーがなかったんですね.これは痛い経験でした.

それに加えて,この高見ダム周辺は度重なる道路崩落と復旧工事で立ち入り禁止が長く続いており,単純にフィールドに入るのも難しい状況でしたので,なおさらでした.

初めて高見ダム周辺に行ったときの当時の思い出としては...ダムの駐車場で一人で野宿していたんですが,夜半前にふと気づくと,ダムの上にかかる低い雲の中に不思議な光が見えて,右に左に動いているんですね...私はこれはもうUFOに違いないと思い,abduction という言葉が脳裏をよぎりました.高見ダムを知らない人は.あ?と思うかもしれませんが,なにしろ北海道,最終人家から30kmは入ったところですからね...しかしそのうちにその光点の正体が分かりました.クルマのヘッドライトです.そのとき私は知る由もなかったんですが,当時,道道静内-中札内線の工事が奥地で行われており,その工事関係者が(なぜか)深夜林道を降りていくのに遭遇したというわけです.次の日,奥に入ってみて,とんでもない山奥に立派な橋が(道もないのに)架かっているのに仰天しました.その静内-中札内線も結局そのあと,計画中止になっています.あの道路が貫通すれば,北海道中軸部を横断する素晴らしい地質ルートになったと思うんですけどね...というのは地質屋の勝手な話というものでしょう.

あの高見ダムへのアプローチ,今はどうなっているんでしょうね...?

2009/11/26 09:57:39


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