蝦夷東帯とは?





下の書き込みで,『蝦夷東帯』というものを前置きなしで書いてしまいましたが,これはやっぱり注釈が必要でしょうね...ということで,クリノ沢の蝦夷層群について書く前に.

左の図は,鳴島さんが描いた北海道南部地域の地帯区分図に私が手を加えてずっと使っているものです.
蝦夷層群の分布地帯として有名な空知-エゾ帯は,単純に言うと,西から,蝦夷層群-高圧変成付加体&蛇紋岩-蝦夷層群-白亜紀付加体,の4ゾーンに分かれています.これらは非常に大まかに言うと,蝦夷層群の分布による2列の複向斜とその間の複背斜(神居古潭帯)からなっています.だからと言って単純に南北に軸を持つ褶曲帯とは言い切れないところがミソです.

この2列ある蝦夷層群分布帯の東側のもの,神居古潭帯とイドンナップ帯に挟まれた狭長な部分が『蝦夷東帯(Eastern Yezo Zone)』ということになります.
これはもともと,川村ほか(1999)で使った『蝦夷累層群東帯(Eastern Belt of Yezo Supergroup)』という語が元になっていますが,植田さんが彼らしい簡潔なものに改めてくれたものです.
ちなみに,日本語にすると『帯』ですが,英語では Belt ではなく Zone となります.つまり日本語では正確には『亜帯(Subbelt)』とするのが適当かもしれませんが,そこはまあ植田さんが.(^^;

話を元に戻すと,この蝦夷東帯は以前は『白亜系向斜帯』とか呼ばれていて,小山内・松下大論文でも,西側の(夕張-三笠とかの)蝦夷層群とは化石産出頻度や岩相(層序?)がいろいろ異なる点がある,と指摘されていました.

現時点では,蝦夷東帯のもっとも大きな特徴は,『中部層準に大きな不整合があり神居古潭帯を不整合に覆っている』ということになるでしょう.この不整合については,このカテゴリーで既に書いたとおりです.ただし蝦夷東帯全体にわたって不整合というわけではなく,南北に見ると中央部(額平川~三石川)に限定されています.(=富良野・浦河では下部-中部は整合関係)
一方,『蝦夷西帯』では,蛇紋岩が emerge したことはわかっています(蛇紋岩礫・蛇紋岩砂岩)が,蝦夷層群の柱状図の中に不整合はまったくありません.不整合と報告された,例えば空知大滝の露頭は,前に書いたとおり不整合ではないことが分かっています.

さて...なんだかごちゃごちゃになってしまいましたが,空知-エゾ帯の中央部に露出する神居古潭帯が,単純な複背斜ではない,つまり空知-エゾ帯(の成層構造)ができたずっと後の単純な褶曲で中央部に露出しているわけではない,ということが理解していただけたでしょうか?

2012/02/24 14:20:48


カテゴリー目次へ戻る
トップページへ戻る