蝦夷層群基底不整合-上アブカサンベ編その2





上アブカサンベ続き.

ある意味で,この場所は,蝦夷層群中部層準基底不整合の『模式地』なのかもしれません.それほど魅力的な試料が集中しています.

この写真は,望月君と行ったとき苦労して取った不整合面のサンプルです.かなり風化していて割れ目も多く脆かったので,望月君が樹脂で固めて切断し研磨してくれたものです.

自慢するわけではありませんが,長い間地質屋やっていても,こういうサンプルを採れる機会というのはそうそうないと思います.そうですよね?

下半部は白亜紀付加体の構成岩類である緑色岩で,その上に凹凸のある不整合面で蝦夷層群の基底緑色岩礫岩が接しています.緑色岩は非変成~弱変成だと思われますが,炭酸塩鉱物のプールが発達しています.
その上位の基底礫岩は砕屑物支持でけっこう淘汰がよく,礫はよく円磨しています.植田さんの話では,この中にカキと思われる貝殻破片が入っていたそうです.




で...一番目覚しいのは,この緑色岩礫岩の薄片を作って見てみると,こんな具合に,青色角閃石を多量に生じた高圧型変成岩の礫が普遍的に含まれていることです.
要するにこの不整合というのは,単に蝦夷層群内部の層序現象ではなく,『高圧変成作用を被った付加体が上昇して陸化し蝦夷層群中部層準に覆われた』ことを示しているわけです.

これは,(おそらく)前弧テクトニクスのある意味普遍的なケースであって,故渡辺暉夫教授が『信じがたい』とおっしゃったのは,まさにこのことであると思います.

2010/01/14 14:44:25


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